絵本作家インタビュー

vol.139 絵本作家 池田あきこさん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、今年で誕生30周年を迎える猫の「ダヤン」シリーズが大人気の絵本作家・池田あきこさんです。ショップのキャラクターとして生まれたというダヤンの誕生秘話、本好きの子どもだった頃の話、子育て&誕生したばかりのお孫さんとのエピソードなどを伺いました。(【後編】はこちら→

絵本作家・池田あきこさん

池田 あきこ(いけだ あきこ)

1950年、東京・吉祥寺生まれ。1983年革小物専門店「わちふぃーるど」をオープン。猫のダヤンが人気キャラクターになる。1988年『ダヤンのおいしいゆめ』(ほるぷ出版)で絵本作家デビュー。著書に『ダヤンのコレクションブック』シリーズ、長編物語『ダヤンの長編ファンタジー』(以上、ほるぷ出版)ほか、画集、スケッチ紀行シリーズなど多数。作品の原画は、河口湖木ノ花美術館(http://www.konohana-muse.com/)で常設展示されている。
わちふぃーるどオフィシャル・ウェブサイト http://www.wachi.co.jp/

ダヤン誕生30年、もともとはお店のシンボルキャラクターとして登場

ダヤンのおいしいゆめ

▲森に昼寝に出かけたダヤンが夢を食べるバクと出会って……。奇妙な友情物語。『ダヤンのおいしいゆめ』(ほるぷ出版)

ダヤンが誕生して30周年を迎えました。もともと私は、40年前から革製品のメーカーを起業していたのですが、30年前に東京・自由が丘にショールームを兼ねた直営店「わちふぃーるど」を開店した時に、そのお店のシンボルキャラクターとして、ダヤンが誕生したのです。

その頃から、「わちふぃーるど」という架空の国をつくりたいという構想はあって、それまでほとんど絵を描いたことがなかったのに、ダヤンを描いてみようと思いました。当時から、ダヤンをはじめ、今の主要キャラのほとんどができていたんですよ。

まずは、お店のロゴの真ん中にダヤンを入れて、お店の椅子もダヤンや他のキャラクターを入れたものを置いて、包装紙にもダヤンを入れたところ、それが人気になって……。ダヤンの革製品も売れて、次はパステルで描いたダヤンの大きなポスターをつくって店に貼ったら迫力があってね。店に入ってくる人みんなが、そのポスターを見て口ぐちに、「かわいいー」「冷たい感じ……」「すごく怖い?」とかいろんなことを言いながら、誰もスルーをしないの。きっと、見る人の気持ちになんらかの引っかかりがあったのね。

そのうち、この子を使って架空の国を絵本にしたいと思うようになって、それでまず、『ダヤンのおいしいゆめ』のコンテをつくって、それを出版社に売り込みに行きました。編集の方には「おもしろい」って言ってもらえたのですが、まずは社内の会議にかけないといけないから、出版できるかの返事は待っていただいて、だけど先に絵を描いておいてください!と言われて……。でも私は、すぐ本を出してもらえるかと思っていたから、待ちきれなくて(笑)

私は革人形もつくっていて、人形って1体つくるだけで1ヵ月はかかってしまうけど、絵はそれほど時間がかからないし、自由自在にいくらでも架空の国とお話をつくれるでしょう? そこがすばらしかったもので、出版についてもじっと待っていられなくて、自分のお店でダヤンの「バースデーブック」という、友だちの誕生日や日記が書き込めたり、マンガや絵話が載ったものをつくったの。それは当時、とても評判になりました。

その後、絵本も無事に出版されることになって、私の大好きな本屋さんに自分の本が並ぶことになったのが、ものすごく嬉しかったことを覚えています。

ダヤンという道先案内がいたから、アイデアが噴き出してくる

池田あきこさん

トリポカの謎

▲魔法玉・トリポカを求めてわちふぃーるど中を旅する、マンガ仕立てのアドベンチャー・コミック本。『トリポカの謎』(白泉社)

はじめての絵本制作は、ものすごく大変、というほどでもなかったかな。何しろダヤンという道先案内がいたから、アイデアが噴き出してくるような感じだったの。この地球生まれのダヤンという猫を、ヨールカの魔法の扉で、わちふぃーるどという架空の国に行かせる、という設定ができてからは、そこでのお話をどんどん拾い集める、という感じでした。

あと、私は地図をつくるのが好きなの。地図があると、まるでその国があるものみたいに、人が納得してくれる。だから、最初にわちふぃーるどの地図をつくったんですけど、恐竜が住む街だとか、鉄道も引いたし、遺跡もジャングルとか、好きなものを全部も詰め込んで、お話をつくる時にもこの地図を眺めていれば、まるで浮き出してくるようにお話ができあがっていったのです。でも、絵本になっているのは、まだほんの一部なんですよ!

ダヤンを絵本にして変わったことと言えば、例えばグッズのこのキャラクターは、こういう性格でどこに住んでいて、と説明しても、「へー。そんな設定まで考えられてすごいですね!」で終わってしまいがちですけど、絵本は絵と文で人の感情に訴えかけるものがあるので、沁み込みやすい。ダヤンってこういう猫なんだ、って説明しなくても本を読んでもらえば納得してもらえるんですよね。

当初、ダヤンをどんな性格にするか全然決めてなかったし、「ダヤンはどのような性格なんですか?」と聞かれても、「分からないんだよね」と言ってたほど(笑) でも、今では分かっているんです。どんな猫かってことがはっきり分かったのは、『トリポカの謎』というアドベンチャー・コミック本を出した時。

ダヤンのいい加減さがよく分かって、これ以来、ダヤンっていい加減で怠けもので、小さな冒険が好きだけど、事件にまきこまれやすい、そんな猫だとはっきり分かった。そういう風に生まれついた猫なんです(笑)

ダヤンのモデルになったのは、うちにいた猫のダヤン。店をオープンさせる前から、ずっと一緒にいた猫です。顔は似ていたかな……? 逆にお客さまから、「うちの猫、ダヤンにそっくりです」と言われることがすごく多いんですよ。

ダヤンの、どこを見ているか分からない表情とか、違う所を見ているみたいな目は、猫に共通しているところだから、似ていると言えば似ているし、それほどでもないと言えばそれほどでもない?

親子で一緒に楽しめるシリーズ・ベベダヤン

だいすき ベベダヤン

▲かわいい猫のぬいぐるみ、ベベとおもちゃたちが活躍する楽しい絵本。『だいすき ベベダヤン』(ほるぷ出版)

30周年のタイミングで、小さなお子さんがお母さんと一緒にめくりながら読める絵本として、『だいすき ベベダヤン』を出しました。

今までのダヤンシリーズと比べて、はっきりした色調の、きれいな色合いの絵本がいいかな、と思って。ピンクという色は、今までの絵の中には出てこなかった色合いなので、新鮮だと言われますね。

ベベダヤンは、ダヤンの飼い主の女の子がつくったぬいぐるみ、という設定なの。だからヒゲもないのよ。チクチクするから(笑)

このお話は、フィンランドに行った時、庭におままごと用のおもちゃの家があるのを見たことがモチーフになっています。おもちゃの家の中には、おままごとセットがあって、いいなーと思って。そのおもちゃの家が舞台になっています。

そして、小さな絵本シリーズ・コレクションブックの7年ぶりの新作『ダヤン 妖精になる』が12月に出る予定です。毎年、赤ちゃんになったダヤン、ベイビーダヤンというシリーズを出していて、そのシリーズとして、今度は妖精ダヤンを出すことが決まって、絵本にも登場することになりました。

この夏には絵本の構想と、今回の絵本には花がたくさん登場するので、実際に花を見てどんな花にしようかという参考のため、スコットランドに行ってきました。スコットランドの国花はあざみなので、兵隊になっていたり、いろんなところに出てくるから、ぜひ新刊で探してみてくださいね。

そして、ついにダヤンはアニメにもなります! 来年の春から放映予定なんです。アニメを通して、小さなお子さんにももっとダヤンを知ってもらえたらいいな、と考えています。お母さんたちも、お子さんと一緒に見て欲しいですね。


……池田あきこさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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