絵本作家インタビュー

vol.107 絵本作家 林木林さん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『ありさんとぞうさんのおさんぽ』などの絵本で注目を集める詩人で絵本作家の林木林さんです。『どうぶつぴったんことば』や『おすしですし!』など、楽しい言葉遊び絵本でも人気の林さん。言葉遊びの魅力や絵本に込めた思い、新作の制作エピソードなど、たっぷりとお話しいただきました。
今回は【前編】をお届けします。(【後編】はこちら→

絵本作家・林木林さん

林 木林(はやし きりん)

山口県生まれ。「暮しの中に詩を」をコンセプトに、詩や絵本、言葉遊び作品の創作や自作詩のテレビ、ラジオ、CM等での朗読など、幅広く活動。主な絵本に『ありさんとぞうさんのおさんぽ』(絵・ふくだとしお+あきこ、鈴木出版)、『どうぶつぴったんことば』(絵・西村敏雄、くもん出版)、『おすしですし!』(絵・田中六大、あかね書房)、『なつやさいのなつやすみ』(絵・柿田ゆかり、ひかりのくに)などがある。
詩人・絵本作家・言葉遊び作家 林木林のホームページ http://www.hayashikirin.com/

詩の表現を広げるため、絵本の世界へ

ゆうひのおうち

▲林木林さんのデビュー作『ゆうひのおうち』(鈴木出版)。絵は篠崎三朗さん

私は習い事とか趣味とか、わりといろんなことに興味を持って挑戦してみるタイプだったんですけど、どれもすぐに飽きてしまって、長続きしなかったんですね。私には「これが得意」と言い切れるものがない……そう気づいたら、なんだかとても居心地が悪くて、何か見つけなくちゃと思うようになって。いろいろ考えるうちにたどりついたのが、子どもの頃から好きで書き続けてきた詩でした。私にはもうこれしかない! そんな風に思って、詩人として本気で詩に取り組むことにしたんです。

それからは、詩のコンクールに応募したり、雑誌に投稿したり……自分の書いた詩をたくさんの人に見てもらうことで、いろんな刺激を受けるようになって、少しずつ詩人としての自信をつけていきました。

活字で見せる詩というのは、一番スタンダードな詩の形ですが、詩にはもっといろんな表現方法があると私は思っているんですね。なので、詩の朗読に挑戦したり、写真と詩を組み合わせて見せたり、ラジオCM用の詩を書いたりと、ジャンルを越えてさまざまな活動をしてきました。山口県防府市のコミュニティFM(FMわっしょい)では、詩や短歌、俳句、だじゃれ、あいうえお作文などの言葉遊びを楽しむ「ことばのあそビバ」というコーナーを担当していたりもします。

5年ほど前からは、絵本作家としても活動しています。言葉と絵が一体になることで、詩の表現がもっと広がるんじゃないか……そんな思いから、絵本の世界に飛び込みました。言葉だけの詩では表現できないことが伝えられるようになって、とても楽しいです。

野菜で楽しむ言葉遊び『なつやさいのなつやすみ』

なつやさいのなつやすみ

▲カラフルなイラストと言葉遊びが楽しい一冊『なつやさいのなつやすみ』(ひかりのくに)。絵は柿田ゆかりさん

『なつやさいのなつやすみ』は、なすが「うれしいなっす」と言ったり、オクラが「あつくて おいらクラクラだ」と言ったりと、夏野菜にまつわるだじゃれをたくさん盛り込んだ言葉遊び絵本です。

もともとは月刊絵本の7月号のお話として書いたものだったんですが、好評だったので単行本化することになって。月刊絵本では、野菜たちがざるに乗るところで終わりだったんですけど、単行本ではもう少しお話をふくらませて、おいしいカレーができあがるところまで描きました。

制作の途中、自分でも声に出して何度も読んだりしたんですけど、自分が書いたものが他の人にどんな風に読み伝えられるものか、その辺がよくわからなかったんですね。それで、少しでも客観的に見直せたらと思って、知り合いのいる保育園で読み聞かせしてもらったんです。子どもたちがどこに反応しているかを見たり、実際に読み聞かせされた先生のご意見を伺ったりして、その上でさらに言葉を微調整していきました。

最近、知り合いの保育士さんから、「野菜嫌いの子にこの絵本を読み聞かせしたら、その子が野菜を食べるようになった」という話を聞いて、びっくりしてしまいました。絵本の持つ力に改めて驚かされています。

楽しさ“すし詰め”『おすしですし!』

おすしですし!

▲おもしろさ10冊分! 言葉遊び満載の絵本『おすしですし!』(あかね書房)。絵は田中六大さん

『なつやさいのなつやすみ』は、読み聞かせを楽しんでもらえることを第一に考えて制作したんですが、『おすしですし!』では、だじゃれや回文、しりとり、あいうえお作文など、言葉遊びを盛り込めるだけ盛り込みました。まさに楽しさ“すし詰め”の絵本です。

魚にまつわる言葉遊びをたくさんつくる必要があったので、制作中は魚のことばかり考えてました。お話の本筋以外のところでも、うしろの方にいるお客さんたちの台詞や見返し(※)にも言葉遊びを盛り込んだので、それらも入れたらかなりの数になります。帯に「おもしろさ10冊分」とあるんですけど、そのぐらいボリュームがありますね。

※見返し……表紙を開いてすぐと、裏表紙を開いてすぐのところにある、本の中身と表紙をつなぎ合わせている見開き部分のこと。

これをまともに読み聞かせしようとすると、一時間近くかかるかもしれません(笑) そういう意味では、正統派の読み聞かせにはちょっと不向きな絵本かもしれないんですが、たとえば今日はだじゃれのページだけ、次の日は回文のページだけ……という感じで、分けて楽しんでいくのもいいですし、親子一緒に早口言葉を言ってみたり、言葉の並び替えをあてっこしたりと、遊びながら楽しむのもいいですよね。この絵本を囲んで、家族で盛り上がってもらえたらうれしいです。

言葉遊びの絵本はほかにも、言葉と言葉をくっつけて文章にしていく『どうぶつぴったんことば』もありますし、今後もいろいろとつくっていく予定です。私、ものすごい言葉遊びオタクなんですよ。言葉遊びをやらせていたら、いつまででもやってるってくらい(笑) みなさんもぜひ、絵本を通じてその楽しさを味わってみてくださいね。


……林木林さんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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