絵本作家インタビュー

vol.96 絵本作家 山本孝さん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『十二支のおはなし』をはじめとする行事絵本シリーズでおなじみの絵本作家・山本孝さんです。『ちゃんがら町』など昭和のノスタルジーを感じさせる絵本の数々は、どのようにして生まれたのでしょうか? 現役・子育てパパでもある山本さんに、お父さんの読み聞かせや子育てについても伺いました。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら

絵本作家・山本孝さん

山本 孝(やまもと たかし)

1972年、愛媛生まれ。大阪デザイナー専門学校卒業後、あとさき塾、メリーゴーランド絵本塾で学ぶ。主な絵本に『十二支のおはなし』『ふくはうちおにもうち』などの行事絵本シリーズ(文・内田麟太郎)、『がっこういこうぜ!』(文・もとしたいづみ)、『ちゃんがら町』(以上、岩崎書店)、『むしプロ』(教育画劇)、『雪窓』(文・安房直子、偕成社)、『祇園精舎』(編・齋藤孝、ほるぷ出版)などがある。
よつばやホームページ http://yotsubaya.petit.cc/

笑いと友情の痛快妖怪絵本『がっこういこうぜ!』

がっこういこうぜ!

▲おかしな妖怪が次々と登場する『がっこういこうぜ!』(岩崎書店)。文はもとしたいづみさん

新作の『がっこういこうぜ!』では、もとしたいづみさんの文章に絵を描かせてもらいました。学校に行きたくない男の子が、通学路に待ち受ける妖怪たちを妄想するお話です。

妖怪が全部で7匹登場するんですけど、それがどれも変な名前で……「ようかいずべべんこちゃん」とか「ホンゲラドベッチャーマン」「みゃんめれけむちょむちょどん」「ボッカンスッコはくしゃく」など、聞いたことも見たこともない妖怪ばかりなんです。

ビジュアルはすべて任せてもらえたので、妖怪の名前をもとに想像を働かせて、好きに描かせてもらいました。最初はとにかくいろいろ描いてみて、その中から自分で「これかな?」と思ったものを、もとしたさんにファックスで送って確認してもらう―― そんな流れでキャラクターを決めていったんです。これはちょっとってことで考え直すときもありましたけどね。たとえばホンゲラドベッチャーマンなら「アフロは生かしたいね」とか、そんな感じで。このやりとりがまた、おもしろかったんですよ。

僕は、もうおなかいっぱい!ってくらい描き込みたいタイプなので、好きなだけ描き込めた絵本は自分でも満足度が高いんですね。そういう意味で『がっこういこうぜ!』は、最近では一番、描いてて楽しかった絵本です。登場するキャラも多いし、細かいところまで描き込んだりもしたので、描くのにかなり時間がかかったんですけど、おもしろい絵本になったなと思っています。

世代が違っていても、感じることは一緒であってほしい

むしプロ

▲カブト対クワガタのプロレス大会を描く『むしプロ』(教育画劇)

今、僕の絵本を読んでくれている子どもたちって、僕とは年齢も離れているし、時代とともに子どもたちのまわりの環境も変わってきてるとは思うんですけど、たぶん変わらない部分もいろいろあると思うんですよね。

おもちゃとかはやっぱり流行り廃りもあるし、どんどん進化しているので、僕の子どもの頃とは遊び方も違うかもしれないですけど、感じることとか笑うとことか、そういうのは一緒やんな?って……これは僕の希望でもあるんですけどね。絵本を通じて、世代の違う子どもたちと共感できたらいいなと思っています。

自分の絵本に対する反応を直接知る機会はあまりないので、読者の方々からのはがきはうれしいですね。「絵に惹かれて選びました」とか、「絵が好きなのでいつも読ませてもらってます」みたいな感想をいただくと、とても励みになります。へこんだり煮詰まったりしたときは、そういうはがきを見て「がんばれ俺!」って自分を励ましてるんですよ(笑)

『むしプロ』の読者はがきでは、お母さんとお父さんとでかけあいで実況して盛り上がりました、という声がたくさん寄せられました。こういうお父さんも参加しやすい絵本を、これからもたくさん生み出していきたいなと思ってるんです。お父さんが自分で買って帰りたくなるような“ザ・男子絵本”って、まだまだ少ないじゃないですか。今は子育てするお父さん、読み聞かせするお父さんも増えてきているので、そんなお父さんたちと一緒に“ザ・男子絵本”をつくっていきたいですね。

「ダメ」はNGワード! 山本家の子育て

雪窓

▲山本孝さんの描く雪と闇が魅力的な一冊『雪窓』(偕成社)。文は安房直子さん

うちには今、2歳の娘がいるんですけど、0~2歳ぐらいを対象にした絵本っていうのはそれまで全然関心がなかったので、子どもが生まれてから見るようになったんですね。なるほど、こういう表現があるのかと、感心しながら読み聞かせしてました。自分の絵には向いてないとわかっているので、挑戦しようとは思わないんですけどね。

自宅で仕事をしているので、子育てもいろいろやってます。おむつ替えや食事、お風呂、寝かしつけ…… 母乳以外ならほぼ何でも(笑) 子どもが生まれてから生活はがらっと変わりましたけど、会話ができるようになってきたので、今はだいぶ楽になりましたね。子どもの要求にきちんと耳を傾けてあげると、こっちの言うことも結構わかってくれるので、自然と自分も言い方を考えるようになりました。

最近、我が家では「ダメ」はNGワードにしているんです。「ダメ」と一方的に言ってしまうと聞く耳がなくなってしまうので、「そやな、これ持ちたかってんな」みたいな感じで、まずは子どもの気持ちに寄り添うんですね。それから「でもな……」と、できるだけちゃんと説明して、理解を促すようにしています。「ダメ」ばかり言ってると子どもも意地を張ってしまうし、「ダメ」って言ってるこっちも疲れちゃいますからね。

これからもゆるゆると子育てをしながら、絵本づくりを楽しんでいきたいと思います。


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