絵本作家インタビュー

vol.91 絵本作家 やぎたみこさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、第2回リブロ絵本大賞を受賞した話題作『ほげちゃん』でおなじみの絵本作家・やぎたみこさんです。ちょっぴり不思議で、ユーモアあふれる絵本の数々は、どのようにして生まれたのでしょうか? 立体制作から始まるやぎさんならではの絵本づくりや、亀にまつわるエピソード、子育てについてなど、たっぷりと伺いました。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら

絵本作家・やぎたみこさん

やぎ たみこ(八木 民子)

兵庫県生まれ。武蔵野美術短期大学卒業。イラストレーターのかたわら絵本を学び、2005年、第27回講談社絵本新人賞佳作を受賞。『くうたん』(講談社)で絵本作家としてデビューし、「大人もいっしょに楽しめる、子どものための絵本」の制作をつづけている。主な作品に『もぐてんさん』『おにころちゃんとりゅうのはな』(岩崎書店)、『かめだらけおうこく』(イースト・プレス)、『おはぎちゃん』(偕成社)、『くらげのりょかん』(教育画劇)などがある。2011年、『ほげちゃん』(偕成社)で、第2回リブロ絵本大賞を受賞。

色とりどりのくらげが登場!『くらげのりょかん』

『くらげのりょかん』は、くらげの形をした宇宙人が出てくるお話です。くらげって宇宙人っぽいよなってところから、お話が浮かんできました。

ちょっとわかりにくいかもしれないんですけど、旅館の仲居さんたちも中身はみんなくらげなんです。カバーの袖にくらげの着せ替えを載せました。切り取って着せ替えとして、くらげたちを仲居さんや番頭さんに変身させて、遊んでもらえたらうれしいですね。

くらげのりょかん

▲舞台は宇宙人が経営する奇妙な旅館!? ユーモアたっぷりのファンタジー絵本『くらげのりょかん』(教育画劇)。右側の写真2枚は、旅館を描くためにやぎさんがつくられた模型。テーブルや座椅子、床の間などもちゃんとあります!

旅館を描くのは初めてだったので、どういう設備があるのか、客間は何部屋ぐらいあるのかといったことを、いろんな旅館のサイトを見ながら研究しました。旅館ごと飛び立ってしまうお話なので、離れがあったらだめだな、とか。そうやって間取りを決めてから模型をつくって、絵にしていったんです。

大変だったのは、色づくり。賑やかな土産物屋さんやお祭りの出店みたいな雰囲気の世界にしようと思ったら、いろんな色を使うことになってしまって。くらげたちも、全部色が違うんですよ。色をつくったら、ボトルに入れて冷蔵庫で保存するんですけど、色の数が多いものだから、冷蔵庫が絵の具だらけになってしまって……家族からは「これさえなければ暮らしやすいのに」なんて言われてましたね(苦笑)

無駄に多い従業員数、無駄に多いくらげなど、なんでも“無駄に多い”感じを意識して描きました。描くのは大変だったんですけど、その分いろんな見どころのある絵本になったんじゃないかと思います。

絵本はいろんな世界を体感させてくれる

もぐてんさん

▲謎の生物「もぐてんさん」との忘れられない夏の一日を描く『もぐてんさん』(岩崎書店)

私はもともと、絵本が大好きだったわけでもなく、絵本のことをよく知っているというわけでもなかったんですね。子どもの頃に読んだ絵本のことはなんとなく覚えてますけど。小学5、6年生のとき、担任の先生が毎日1冊絵本を読んでくれていたことがあって、それはそれで楽しかったんです。でも、その経験から絵本作家になりたいと思った、というわけでもありません。

でも、子どもの頃から絵を描くのは好きで、ほかに得意なこともなかったので、絵の道を進んできました。絵本作家になるまでは、イラストレーターとして実用書で小さなカットを描く仕事をしたりしていたんです。その間に結婚して、子どもを二人育てました。でも私、子どもたちにはそれほど絵本を読んであげてなかったんですよ(苦笑) 幼稚園や小学校で読み聞かせしてもらう機会が結構あったみたいで、絵本のことは娘の方がよく知っているくらいでした。

絵本を描いてみようと思ったのは、2004年のこと。公募のサイトで、講談社絵本新人賞の応募要項を見つけたのをきっかけに、なぜか突然がんばってみようという気になって、絵本の新人賞に応募し始めたんです。娘からは「お母さんが絵本!? ありえない!!」って驚かれましたね(笑) その後、パレットクラブスクールやあとさき塾などの絵本のワークショップに通って、2007年に『くうたん』でデビューしました。

本を読んでいると、別の世界にいるような気分になるじゃないですか。本の魅力はそこだと思うんです。私は昔『小公女』を読んで、ロンドンの寄宿学校に行った気分になりました。本を読むことで、いつもの生活の中では体験できないことを、空想の中で体験できるんです。絵本の場合は絵があるので、小さな子でもその世界に入っていきやすいんじゃないかなと思います。

これからも、まったくの別世界に行けるようなファンタジーを描いていきたいですね。私の絵本を読むことで、いろんな世界を体感していただけたら、とてもうれしいです。

ときには“いけない母でいる日”があってもいい

絵本作家・やぎたみこさん

子どもが大きくなったので、私自身の子育てはとっくに終わってます。でも、子どもたちが小さかった頃は、やっぱり大変でしたね。子どもの相手と家事、どっちをとる?って聞かれたら、断然家事!って思ってました。子どもの相手をずっとしてるのって本当に根気がいりますから。

でも、子育てに苦労する時期は永遠には続かないので、子育て真っ最中の方たちには、そのひとときをとにかく楽しんでいただきたいですね。ときには“いけない母でいる日”をつくってあげるのもオススメです。たとえば、一日DVDを見せて自分はダラダラしちゃうとか…… もちろん、毎日じゃ困りますけど、たまにはそんな日もあっていいかなってくらい息を抜いて。完璧を目指しすぎると、親にも子にもよくないんじゃないかと思いますね。

絵本の読み聞かせについては、私自身があまりやらなかったので、えらそうなことは言えないんですが……(苦笑) 自分では、あんまり好きじゃないかなっていう絵本でも、試しに手にとって読んでもらえるといいなと思います。読んでみると、意外に大好きになってしまうかもしれません。特にお子さんには、いろんな絵本を読んであげてくださいね。


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