絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、「うしろにいるのだあれ」シリーズでおなじみのご夫婦ユニット・accototo(アッコトト)の、ふくだとしおさんとあきこさんです。子どもも大人も魅了する、愛らしい動物たちの世界は、どのようにしてつくられるのでしょうか。新作エピソードや子育てにまつわるお話など、たっぷりと伺いました。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら)
1971年、大阪府生まれのふくだとしおと、1978年、兵庫県生まれのふくだあきこによるユニット。絵本、絵画、壁画、立体、雑貨など、さまざまな分野で活動している。主な作品に、「うしろにいるのだあれ」シリーズ、『ひゅるりとかぜがふくおかで』(幻冬舎)、「ポポくん」シリーズ(PHP研究所)、『ピネくんとさかなのおうち』(学研)、「ごらん」シリーズ(イースト・プレス)、『きょうのそらはどんなそら』(大日本図書)、『ほら、そっくり』(教育画劇)などがある。 http://accototo.net/
ふくだあきこさん(以下、A) 「ポポくん」のシリーズのテーマは、“何かをつくり出す”ということ。第一弾の『ポポくんのミックスジュース』をつくるにあたっては、実際に私たちもミックスジュースをつくってみたんです。家にあった古いジューサーが大活躍しました。
ふくだとしおさん(以下、T) これとこれを混ぜたらおいしそうだなって、味や色、匂いなどを想像しながら、いろいろとつくりました。その中でおいしかった組み合わせを絵本に載せたんですよ。
A 最新作の『ポポくんのかぼちゃカレー』のときは、いろんなカレーをつくりました。実際にかぼちゃをくりぬいたりもしたんですよ。もちろん、あんなに大きいのはないですけどね(笑)
▲つくることの楽しさを味わえる! 人気の「ポポくん」シリーズ『ポポくんのミックスジュース』、『ポポくんのおんがくかい』、『ポポくんのかぼちゃカレー』(いずれもPHP研究所)
T 僕は子どもの頃、おもちゃをねだると、親父が「一緒につくろう」と言って、そのための材料を買ってきてくれたんですよ。つくっていく過程は本当に楽しかったし、そういう経験があったからこそ、なければ自分で工夫してつくろうって考えられるようになったんだと思うんです。
だから今の子どもたちにも、その楽しさをいっぱい経験してほしいし、その中で自分で生み出す力というのを身につけていってほしいなと思っています。
わが家でも、娘といろんなものをつくってますよ。今、娘はビー玉とか水玉とか、まんまるのものがすごく好きで。丸めたアルミホイルを金槌で叩いていくと、きれいなパチンコ玉みたいなものができるんですけど、まる好きの娘のために、そんなのをいっぱいつくったりしています。
A おにぎりもまんまるに握るんです(笑) 一緒に料理やお菓子づくりとかもするんですよ。私自身はどちらかというと料理が苦手な方なんですけど、娘は好きみたいで、やりたがるんです。つくる楽しさを感じているんでしょうね。
T 好きなこと、興味のあることは、とことん追求させてあげたいですね。
T 読み聞かせやワークショップなどのイベントで盛り上がるのが、「ごらん」のシリーズ。今までに『のぞいてごらん』『めくってごらん』『さがしてごらん』の3冊が出ています。
『さがしてごらん』は、絵探しの絵本。イベントのときは、コピーで大きくしたものを持っていくんです。「見つけた子は手をあげて!」と言うと、みんな夢中で探してくれるんですよ。
A 当てた子にはちょっとしたプレゼントをあげたりして。かなり盛り上がります。
▲楽しく遊べる、新感覚の絵本『のぞいてごらん』、『めくってごらん』、『さがしてごらん』。新作『くらべてごらん』と『たどってごらん』も5月14日より好評発売中!(いずれもイースト・プレス)
T 『めくってごらん』は、言葉のかくれんぼの絵本です。あるとき“ゆうえんち”という言葉を見ていたら、“うんち”って言葉がかくれてる!と気づいたんですね。それで、言葉の中にかくれた違う言葉が、めくるとパッとあらわれるような絵本がつくれたらおもしろいなと思ったんです。
「“すこっぷ”のなかにかくれているもの、なーに?」とあって、めくると、“こっぷ”だとわかる、というような感じ。ページの上部を部分的にカットして、めくったときにかくれていた言葉が出てくるようにしています。
最後のページは“おわり”という言葉にしたいと思って、どういう言葉なら“おわり”がかくれているか、いろいろ考えたんですよ。
A 見つけたときは、感激しましたね。実際どんな言葉にしたのかは、絵本で見てもらえたらうれしいです。
T 近々、新しく『くらべてごらん』と『たどってごらん』という2冊も出る予定です。『くらべてごらん』は、“いちごのあめ(飴)”と“いちごのあめ(雨)”という感じで、同じ言葉で絵が変わるという絵本。3歳の娘が今、この絵本にすごく食いついてて。かなりウケてます。
『たどってごらん』は、指でなぞって楽しむ絵本。ずーっとつながった線路を延々と指でたどれる、エンドレスな絵本です。ページを戻ったりもするんですよ。
A 手ごろなサイズなので、おでかけのときとかに持っていってもらえたら、ずっと遊べるんじゃないかなと思います。
T 僕は大学時代、金属工芸コースというところで金属の立体をつくっていたんですけど、卒業制作の作品が「接点(つながり)」というタイトルだったんです。考えてみると、これまでに出した絵本も「つながり」がテーマになったものが多くて…… 無意識のうちに、そういう方向にいくみたいなんですよね。
A それは私も同じで、自然とそんなテーマに行きつくというか…… きっと二人とも大事に思っていることだからなんでしょうね。
T ただただおもしろくて、子どもと一緒に最後までゲラゲラ笑って終わる絵本っていうのもありだし、そういう遊びだけの絵本もつくっていきたいなと思っています。
でもやっぱり僕としては、絵本を通じて大切なことを伝えていきたいなと思うんです。ほんのちょっとでいいから、小さな種みたいなものを絵本の中にしのばせておければと。それがいつか、大きくなってからでもいいから、「そういえば昔読んだあの絵本は、こういうことを言ってたのかな」みたいな感じで、花が咲けばうれしい。それが絵本をつくる上での希望ですね。
子育てについては、僕は家で仕事をしているので、普通のお父さんよりはずっと経験してると思うんですけど、正直、どんな仕事よりも大変なんじゃないかと思っています。やっぱりとにかく手がかかりますよね。うちの娘は夜泣きがすごかったんです。30分おきに泣いてたこともあって、本当に大変でした。
お母さん一人でがんばっている方なんて、もっと大変だと思うんですよ。できれば周りの人を巻き込んででも、息抜きできる時間をつくるといいんじゃないかなと思います。
A 私は娘を保育園に送っていったあと、ちょっと遠回りして帰ってきたりしてます。歩くだけでも体がすっきりして、息抜きになるんです。それで、帰ってきたら仕事。そういうメリハリがあると、気分的にも楽になる気がしますね。
子育ては大変ですけど、振り返ってみると、その大変さもいいものに変わっているなと思います。
T 子どもが小さいのは今のうちだけ。そのひとときを、楽しく過ごしていきたいですね。