絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『おでこ ぴたっ』などの作品でおなじみの絵本作家・武内祐人さんです。絵本以外にも、イラスト、壁画、雑貨など、さまざまな形で活躍されている武内さん。こちらも思わずにっこりしてしまう、笑顔あふれる作品の数々は、どのようにして生まれたのでしょうか。現役子育てパパならではのお話も伺いましたよ。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら)
1969年、大阪府生まれ。京都市立芸術大学プロダクトデザイン専攻卒業。イラストレーター、絵本作家。オリジナルのイラスト雑貨の企画、幼稚園や病院の壁画イラストなども手がける。“笑顔”をテーマに描いた動物や子どもたちのイラストで人気を集める。主な絵本に『おでこ ぴたっ』『おはな つんつん』『おててたっち』(くもん出版)、『まってまって』『プララのとんねるぶっぶー』(大日本図書)などがある。。
武内祐人公式サイト「アイボリー」 http://www.ivory1.com/
僕は“笑顔”をテーマに作品制作を続けていますが、笑顔というのは、がんばったその先にあるものだと僕は考えているんです。一生懸命がんばれば、その向こうに笑顔がある―― そんなことを意識しながら、みなさんへの応援の気持ちを込めて描いています。
そうやって作品をつくり続けているうちに、ファンの方や、展覧会に来てくださったお客さんから、メールや手紙などでいろんな声を聞かせてもらえるようになったんです。最近こんなうれしいことがあったんですよ、とか、こんな悲しいことがありました、とか。
そういうみなさんの思いは、僕の中にどんどんたまっていきます。僕はそんなみなさんの思いを常に自分の中に入れて、絵を描いているんです。だからこそ、みなさんに何かしら感じとってもらえるような絵を描けているんじゃないか、と思っています。
つまり、僕のつくり出す作品はどれも、僕ひとりの力だけでは生まれてこないものばかりだと思うんですよ。みなさんの声を聞かせていただけるようになったからこそ、今こうやって描けている。みなさんに描かせてもらっているようなものなんです。
全国で展覧会をしたり、ライブペインティングや壁画などを続けているのも、みなさんへの感謝の気持ちがあるから。奈良でお店もやっているんですけど、それも直接お客さんの声を聞くことができるからなんです。常にそういう声を聞いていたいんですよね。みなさんの声があるからこそ、描き続けていられるわけですから。
▲トンネルの中に広がる想像の世界『プララのとんねるぶっぶー』(大日本図書)
子どもの描く絵って、すごいですよね。子どもの描く絵にはかなわないって、僕は思っているんです。
どうして子どもの絵がそんなにすごいかというと、自由に描いているから。大人と違って、いろんな先入観や経験、知識といったものがないから、本当にのびのびと描くんですよね。それに、子どもは楽しいから絵を描くのであって、楽しくなければ描かないと思うんですよ。だから、本当に楽しんで描いた絵だというのが伝わってくる。上手とか下手とか、関係ないんです。なんの邪心もなく、純粋に楽しんで描いた絵だから、感動するんだと思います。
だから僕も、心の底から楽しんで描いていきたいし、そうやって描いた絵でいろんな人に笑顔になってもらいたい。僕はいろんな先入観や経験もある中で描いているので、やっぱり子どもたちにはかなわないなって思いもあるんですけど、少しでも近づけたらという意識で描いています。
「子どもに絵を描かせたいんですけど、どうやったら上手になりますか」って、お母さんたちからよく聞かれるんです。僕はいつも、描きたいと思うときに描かせてあげること、クレヨンとか色鉛筆とか、描くための道具をちゃんと用意してあげること、それだけでいいんじゃないですかと答えています。親ができることってたぶんそのぐらいしかないし、たぶんそれ以上する必要もないんです。
うちの子どもも2人とも絵を描くのが大好きで、よく一緒に描くんですけど、あれこれ教えたりすることはありません。思いのままに、自由に描いてもらうのが一番ですから。ただ、想像力を豊かに広げて描けるようにと、画材はそれなりに与えています。子どもはきっと、クレヨンが3色あれば、その3色だけでも楽しく描けるんですけど、でも5色あったらもっと楽しく描けるかもしれないでしょう。だから親は、より楽しく描いてもらえるようにってことを考えてあげたらいいんじゃないかなと思います。
僕は子どもの頃から、自分の両親を見ていて、母親って大変だなぁと思っていたんです。自分に子どもができて親という立場になってからも、やっぱりそう感じました。もちろん、父親が大変じゃないわけでも、がんばってないわけでもないんですけど、子どもに対してのことは、どれだけがんばっても母親には勝てないなと思うんですよ。出産も授乳も、父親は代われませんから。
でもだからこそ、父親の協力が大切だと思うんです。僕自身、子どもの世話は積極的にやってきました。お風呂に入れたり、おむつを替えたり、絵本の読み聞かせをしたり……ほかにも、食器の後片付けやお風呂掃除なんかも、できる限りやってました。それだけでも、母親はそのぶん楽になりますからね。母親にしかできないこともあると思うんですけど、少しでも負担を減らせるようにという意識で協力してきました。
だから、子どもが生まれたっていう話を聞くと、いつも言うんです。協力してもらいや、とか、協力してあげや、とか。どっちかに負担がかかると、絶対無理がきますからね。夫婦で協力することが、すごく大事だと思います。
人にそんな風にアドバイスしつつも、そういえば自分も最近あんまり協力できてなかったな、またがんばらないとなって反省することもあるんです。だからこれは、自分に対して言っているようなところもあるんですけどね(苦笑)
今後も“笑顔”をテーマに、いろんな作品をつくっていきたいと思っています。絵本については、長く楽しんでもらえるようなものをつくりたいですね。いつまでも書店に置いてもらえるような絵本。その絵本を読んで育った人が、自分の子どもにも読んであげたくなるような絵本。つくり手としては、そういう作品を目指していきたいなと思います。
武内祐人ショップ&ギャラリー『Ivory(アイボリー)』 http://www33.ocn.ne.jp/~ivory/nara.html 武内さんのイラストグッズが勢ぞろい! 武内さんや若手作家さんの作品展も開催されています 奈良市南市町23-1 TEL: 0742-20-1210 営業時間:11時~19時 月曜定休(月曜が祝日の場合はオープン) |