絵本作家インタビュー

vol.63 絵本作家 のぶみさん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、「しんかんくん」シリーズや『ぼく、仮面ライダーになる!』『おひめさまようちえん』などでおなじみの絵本作家・のぶみさんです。これまでに100冊を超える絵本を出版されてきたのぶみさん。波乱万丈の人生や、夢を叶えるまでの道のり、絵本づくりや子育てで大事にしていることなど、熱く語っていただきました。
今回は【前編】をお届けします。(【後編】はこちら→

絵本作家・のぶみさん

のぶみ

1978年、東京都生まれ。1999年、『ぼくとなべお』(講談社)でデビュー。主な作品に「しんかんくん」シリーズ(あかね書房)、『ぼく、仮面ライダーになる!』(講談社)など、自伝に『暴走族、絵本作家になる』(ワニブックス)など、歌の作詞に「おしりフリフリ」「おっとっとのオットセイ」(NHK教育「おかあさんといっしょ」)など多数。NHK教育の「みいつけた!」では「おててえほん」のイラストを担当している。
絵本作家のぶみのオフィシャルホームページ http://www.nobmi.com/

絵本を描き始めたのは、大好きな彼女のため

『暴走族 絵本作家になる』

▲のぶみさんが絵本作家になるまでとデビューしてからの10年を描いた自伝『暴走族 絵本作家になる』(ワニブックス)

僕は小学校の頃にいじめに遭って、中学時代はほとんど引きこもりの状態だったんです。高校時代からいろんな不良グループとかかわるようになったんですけど、そのうちに160人くらいをまとめる暴走族の頭になってしまって。かなりやんちゃしてた時期があったんです(苦笑)

高校卒業後は心機一転、保育の専門学校に入りました。その学校にかわいい女の子がいて声をかけたんですけど、それまでの僕とは住む世界が違う子だったので、全然話が合わなかったんですね。でも彼女があるとき、「絵本が好き」って言ったんです。それを聞いて思わず「俺、絵本描いてるよ」って嘘ついちゃって(笑)

その日のうちに、近くの文房具屋さんで画材を買って帰りました。それですぐに絵本をつくって、次の日には彼女に見せたんです。彼女は「ほんとに描いてるんだ!」って驚いてましたね。絵本を描いてるっていう僕の話、信用してなかったのかもしれません。そもそも嘘ですしね(笑) でも、「かわいいね」って褒めてくれたんです。ほかの友だちからも「おもしろい」って言われて、単純にすごくうれしくて。

実は僕、そのときから毎日、絵本を描いてるんです。最初は彼女のことが好きだからって理由だけで描いてたんですけど、描いているうちに自分でもすごく楽しくなってきたんですよ。僕はそれまでの人生、まわりの人からダメだダメだと言われることばかりだったから、初めての絵本を褒められて、これしかない、これこそ僕の使命だ!って思ったんじゃないかな。

その後、彼女に「つきあってほしい」って伝えたら、「絵本で賞をとったらね」と言われて。それでまた何作も絵本を描いて、受賞することができたんです。絵本作家になることを本気で考えるようになったのは、その頃ですね。そのときの彼女、今は僕の奥さんなんですよ。

人は落ち込んだ分だけ成長する

絵本作家・のぶみさん

賞をとってからデビューまでの2年間は、絵本を描いては出版社に持ち込むという日々。最初のうちは、持ち込んでも5分ぐらいで断られてたんです。「今何歳なの?」と聞かれて「19歳です」って答えると、無理だろうなって顔されて。まだ若いんだから早くやめてほかの仕事した方がいいんじゃないって言われてる気がして、落ち込みました。この時期は、僕自身を否定するような心無い言葉もさんざん言われましたね。

普通の人なら、そこであきらめてたかもしれない。でも、僕は「やるしかない」って思ってました。絵本作家になれなかったら、きっと何にもなれないって気持ちが強かったから。だからデビューできるまで、出版社への持ち込みをやめなかったんです。

300作つくったところで、やっとデビューが決まりました。そのときは本当にうれしかったですね。あきらめずに続けていれば夢は叶うんだってことを実感することができたので。デビュー作はベストセラーになって、「おかあさんといっしょ」でアニメを担当するようにもなりました。

ただ、それから『しんかんくん うちにくる』が出るまでの7年間も、絵本が売れずに苦労したんです。「なんとかして売れる絵本をつくらないと!」っていう思いで、いつの間にかものすごく我が強くなっていたんでしょうね。我が強くなればなるほど、まわりからのアドバイスも聞けなくなってしまって、余計にうまくいかなくなる。「俺はこんなにすごいんだ」「俺はもっと認められていいはずだ」―― そんな気持ちで描いた絵本はなかなか売れなくて、落ち込んでばかりいました。

でも、人って、落ち込んだ分だけ成長するんですよ。今だから言えるのかもしれないけれど、デビューできるまでの2年間も、デビュー後の7年間も、僕にとっては必要な時間だったんだなって思っています。

息子のために描いた「しんかんくん」

「しんかんくん」シリーズに出てくる“かんたろう”は、息子の名前です。「しんかんくん」は、もともと息子のためにつくった絵本なんですよ。

息子が1歳ぐらいの頃、よく一緒に電車のおもちゃで遊んでたんですね。新幹線は特に好きだったみたいで。それなら息子のために新幹線の絵本を描こう! そんな思いで生まれたキャラクターが“しんかんくん”なんです。うまくいくときは自然とうまくいくもので、『しんかんくん うちにくる』をつくったときは、それまで苦労してたのは何だったんだろう?というくらい、無理なくすんなりとつくることができました。

今、息子は5歳で、その下に2歳の娘がいるんですけど、子どもたちの存在は僕の絵本づくりの大きな原動力になっています。

しんかんくん うちにくる ヘラクレスオオカブトムシのいちばんくん
ぼく、仮面ライダーになる! ぼくんちのティラノサウルス

▲子どもの大好きなものを絵本に!『しんかんくん うちにくる』(あかね書房)、『ヘラクレスオオカブトムシのいちばんくん』(ひかりのくに)、『ぼく、仮面ライダーになる!』(講談社)、『ぼくんちのティラノサウルス』(講談社)

「しんかんくん」のほかにも、仮面ライダーとか恐竜とか虫とか、息子の大好きなものをたくさん絵本にしてきました。とりあえず好きなものは全部絵本にしたので、来年からは息子の嫌いなものを絵本にしてみようかなって思ってるんですよ。好きなものをより好きになるっていうことよりも、嫌いなものを好きになる方が深いのかなっていう気がしていて。

来年からの僕の絵本は、これまでとはがらっと変わると思うので、楽しみにしててくださいね。


……のぶみさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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