毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、武鹿悦子さんの文、末崎茂樹さんの絵による『くすのきだんちは10かいだて』です。月刊保育絵本から生まれた「くすのきだんち」シリーズ1作目。2007年に書籍化した人気作です。
モグラのもぐは、くすのき団地の管理人。10階建ての団地には、キツネの音楽家やサルの大工など、様々な動物達が住んでいます。新しく引っ越してきたカケスのお嫁さんが卵を産むと、それを狙ってヘビがやってきて…。
子どもなら誰しも一度は憧れたことがあるであろう木のおうち。しかも気の合う友だちと一緒に住めたら最高。くすのき団地はそんな子ども達のあこがれがギュッとつまった住居です。
表紙から見切れるほどの太くりっぱな幹のくすのきは、「風と光に包まれて野原にそびえ」ています。くすのき団地を遠景でとらえたシーンでは、遮るもののない野原に、巨大なくすのきが1本、広々と枝を伸ばした様子が描かれています。窓からは遠くの景色を望めるでしょうし、刊行の際の末崎茂樹さんの「画家のことば」にもあるように、「きっと部屋の中はくすのきの香りでいっぱいのはず」。
そんなすばらしい環境に住んでいるのは、管理人のモグラ、音楽家のキツネ、看護師のウサギ、大工のサル、料理人のリス、夜行性のフクロウやモモンガに加えて、カケスが引っ越してきます。様々な職業で、ライフステージもそれぞれの、多種多様な動物達が暮らしています。
この共通点の少ない住民達がどのように暮らしているかは、すぐにわかります。カケスが入居を決めると、引っ越しを手伝い、結婚を祝ってパーティーを開き、卵が生まれたことを皆で歓迎します。それどころか、その卵を狙ってヘビがやって来た時には、すぐに協力して追い出しに成功するのです。2作目の『くすのきだんちへおひっこし』でカエルがこの団地への引っ越しを決めた理由は、「ここの人、みんな優しい」から。気の置けない間柄の住人が互いに思い合い、協力し合う姿は、まるで昔の長屋の暮らしのような温かさに満ちています。
2作目の「作者のことば」で武鹿悦子さんは、「ここで暮らすことの幸せは『ひと』と共に生きることの嬉しさを教えられることです。優しく温かいひとに接することで、自分もまた、優しく温かくなれることの嬉しさです」と書かれています。住人達の心の温かさに触れて、読んでいるこちらまで気持ちが優しくなれるようなシリーズなのです。
<ミーテ会員さんのお声>
息子が今はまっているシリーズ。この絵本は思いやりの心が描かれているので、読んでいる私もホッとする。思いやりって子どもにことばで伝えるのは難しい。だから、絵本に描かれた行動に共感できれば、優しい人に育ってくれるかなあって思う。実際息子は、お友だちが転んだり泣いたりしていたら、「大丈夫?」ってその子のそばを離れない。そんな息子が大好き。いっぱい、いっぱいほめてあげる。絵本から学んだかはわからないけど、このまま友だちを思う優しい子どもに成長してほしいなあ。(3歳7か月の男の子のママ)
シリーズは、『くすのきだんちのおとなりさん』まで10作がハードカバー化しています。月刊保育絵本では、まだまだ新しいお話が掲載されているので、続きが楽しみですね。
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