イチ押し絵本情報

白黒世界を赤いかさが進む 字のない絵本の名作(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.184)

2018年5月24日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 白黒世界を赤いかさが進む 字のない絵本の名作

今回ご紹介する絵本は、太田大八さんの『かさ』。字のない絵本の名作です。

雨の中を、女の子が赤いかさをさして、お父さんを迎えに行きます。背景はモノクロで、女の子のかさだけに色がつけられた字のない絵本です。

見開き

字のない絵本で、色もモノクロの中に赤が一点。物語も、女の子が雨の中を歩いてお父さんを迎えに行くというシンプルなもの。余計な飾りを排したつくりの絵本なのですが、女の子の心情が様々に想像されて、ドラマチックな読後感が残ります。

女の子は、体よりも大きなお父さんのかさを大事にもって、雨の中を歩いています。公園では誰も遊んでいません。池のカモは親子で泳いでいますが、女の子はひとりです。途中友だち親子に会うと、初めて女の子の表情がゆるみます…。最初の数ページだけでも、女の子が、お父さんを迎えに行くことを誇らしく思っていて、同時に一抹の不安や寂しさを感じていることが、じわりと伝わってくるのです。

作の太田大八さんは、ミーテカフェインタビューの中で「子どもが自分で絵本を見て、何かを発見する、自分で物語を作る。そういう意図があった」絵本だと語っています。余計なことが一切語られておらず、当時の普通の女の子の普通の日常を切り取った映像を見ているようです。非常に寡黙で、作品がそのものに余白が多い。 それが読み手の自由な発想をうながします。静かな話とは反対に読み手の想像力が大きく働くため、ドラマチックな印象が残るのでしょう。

同じインタビューの中で太田さんは、女の子のモデルは娘さんで、実際に雨の中駅まで迎えに来てくれたことがあったと明かしています。背景は、読み手である親世代が子どもだった頃の街の様子のようです。一緒に絵本を見ながら、ふと刺激された思い出を子どもに語るというのも、この絵本の楽しみ方のひとつではないでしょうか?

<ミーテ会員さんのお声>
雨の日に図書館に行ったら、目につくところに飾ってあって、印象的な表紙にひかれて借りました。大人が好きになるタイプの絵本かと思いきや、息子も大いに楽しんでいて驚きました。だんだん広範囲の絵になる中で、赤い傘の女の子を「どーこだ?」と探すのがお気に入り。あとはドーナッツのページに来ると、毎回うらやましそうにします。(2歳1か月の男の子のママ)

この絵本が生まれるきっかけとなったのが、レオ・レオニさんの『あおくんときいろちゃん』だそう。いずれも想像力を刺激する作品です。ロングセラー&名作ピックアップでもご紹介しているので、よかったらのぞいてみてくださいね。

▼太田大八さんのインタビューはこちら
「いい絵本で感動することこそ 子どもを育てる最良の薬」


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