イチ押し絵本情報

「ぼちぼちいこか」失敗笑い飛ばす大阪弁のカバくん(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.174)

2018年3月15日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 「ぼちぼちいこか」失敗笑い飛ばす大阪弁のカバくん

今回ご紹介する絵本は、マイク・セイラーさんとロバート・グロスマンさんによる『ぼちぼちいこか』。1980年に日本に紹介されたロングセラー絵本です。

カバくんが消防士やピアニスト、宇宙飛行士まで、様々な仕事に挑戦します。でも、どれもあえなく失敗。途方にくれたカバくんは、ちょっとひと休み。「ま、ぼちぼちいこかーということや」。

見開き

お話はとてもシンプルな構造です。ぽっちゃり体型のカバくんが、意気揚々と登場し「ぼく、消防士になれるやろか」。…が、体の重みではしごの段が全部折れて「なれへんかったわ」。その後も様々な職業に挑戦しますが、次々に失敗するという繰り返しです。

挑戦に失敗するたび、がっくり落ち込むカバくん。すぐに立ち直って次の挑戦をするも、また失敗。漫画のようなユーモラスな展開に、子ども達は大笑いです。

 

不思議なのは、「失敗するカバくんを笑いものにしている」という感じがせず、むしろ「失敗を、一緒に笑い飛ばしている」という読後感があること。

立ち直りがはやく、とぼけた味わいのキャラクターのおかげもあるでしょうが、やはり、最後の「ぼちぼちいこか」というセリフに理由があるでしょう。カバーの折り返し部分にある訳者の今江祥智さんのことばに「あわただしい世に、じっくりと自分をみつめ、ぼちぼちと自分について考えてみることも、たいせつではないでしょうか」とあります。この肩の力が抜けたメッセージに、子どもだけではなく、大人にも愛読者が多いのもうなずけます。

何よりこの作品をユニークな存在にしているのは、翻訳で使われた大阪弁でしょう。大阪出身の今江さんは、『英語でもよめる ぼちぼちいこか』刊行時に、「(毎日カバくんの顔を見ているうちに)カバくんがどうやら大阪育ちみたいな顔に見えてきてしまい-いざ訳そうとすると、大阪弁でしか訳せませんでした」と語っておられます。

ちなみに、英語版のオチの部分はすべて「No」とのみ書かれています。その文字が次第に大きくなっていくのですが、それを「はなしにもならへんわ」「こら、あかんわ」など多彩な表現で意訳しています。また、さきほどの「ぼちぼちいこか」にしても、他の表現に言い換えられない含みがあることばです。大阪弁の味やことばの豊かさを生かした訳こそが、長年愛され続けてきている大きな理由なのではないでしょうか。

<ミーテ会員さんのお声>
ママ友さんのおすすめの『ぼちぼちいこか』を読んでみることに。じーっと聞いている娘。とりわけヒットしている感じはなし。ちょっと対象年齢が上だったかしらと思いつつ「おしまい」というと、すかさず「もう1回読んで!」。2回目、やっぱり受けている感じはなし。でもまた「もう1回読む(読んで)!」。そんな調子で6回読んだ(笑) 終始、笑うわけでもなくじーっと聞いてるだけなんだけど、何が気に入ったのかな~? 翌日は、もう本のタイトルを覚えてて、「『ぼちぼちいこか』読んで~」だって!(1歳11か月の女の子のママ)

作者のマイク・セイラーさんは、200以上の著作があるアメリカの児童文学作家でイラストレーター。「子ども達は、私がこれまでに会ったどの作家よりもすばらしい作家なのです」と語り、全米各地の学校をスクールプログラムとして回っているそう。日本では、ほかに『わゴムはどのくらいのびるかしら?』などが紹介されています。


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