毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介するのは、イギリスの児童文学作家ルース・エインズワースさんの作、石井桃子さんの訳、堀内誠一さんの絵による絵本『こすずめのぼうけん』。1976年に月刊絵本「こどものとも」の1冊として刊行され、1977年に「こどものとも傑作集」として市販本化されたロングセラーです。
お母さんから飛び方を教えてもらって、初めて空を飛んだ日のこと。こすずめは、上手に飛べたことがうれしくて、つい遠くまで飛んでいってしまいます。しばらくして、疲れて羽が痛くなってきたこすずめは、休む場所を探してあちこちの巣を訪ねますが、どこに行っても中に入れてもらえません。やがてあたりは暗くなってきて…。
自分の限界を知らない子どもならではの万能感で、ひとりでどんどん遠くまで飛んでいってしまうこすずめが主人公。絵本を見る子ども達はこすずめの姿に自分を重ねて、ドキドキハラハラの冒険を疑似体験することでしょう。だからこそ、心細さを味わった末の幸せな結末に、心底ほっとするのです。
親目線で見ると、言うことを聞かずに飛び出していったこすずめを叱ることなく、愛情豊かに包み込むお母さんすずめの対応にも心打たれるのではないでしょうか。こすずめの丁寧なことば遣いからも、大事に育てられてきたことがうかがい知れます。わが子が迷子になった時も、こんな風に迎えてあげられたらと感じさせるお話です。
この物語は、訳者の石井桃子さんが講演の中で、イギリスの作家による幼児のための優れたお話の例として紹介されたものだそうです。絵は『たろうのおでかけ』や『ぐるんぱのようちえん』など、ポップな作品のイメージのある堀内誠一さん。刊行当時「こどものとも」編集長を務めていた時田史郎さんは、堀内さんの絵について、「こどものとも」50周年記念ブログの中でこのように記しています。
「この物語の素晴らしさのひとつにリアリティーということがあげられますが、だからといってあまりにも写実的な絵では、物語のおもしろさが生き生きと伝わってきません。どこまで現実の「すずめ」なり、物語の舞台となっている「田園」をデフォルメするのが好ましいのか、堀内さんはそのバランスにずいぶんと苦心なさっていました。(中略)
しかし、完成した『こすずめのぼうけん』を手にとって見ると、この物語には、この絵しか考えられないという思いがします。堀内さんが最初からこの表現方法を思いつかれ、一気に描きあげられたようにしか思えません」
物語そのもののすばらしさ、石井桃子さんの名訳、堀内誠一さんの魅力的な絵…その3つが見事に合わさったからこそ、子どもの心を惹きつける名作となったのでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
飛ぶ練習を始めたこすずめが主役のお話。泳ぐ練習を始めたばかりの息子に、ちょうどいいかもと思って読みました。
遠くまで飛んで疲れてしまったこすずめは、誰かの巣で休ませてもらえるよう頼んで回ります。何度も断られてしまうのだけど、へこたれずがんばります。なかなかいいお話です。
最後、こすずめはお母さんに会えますが、終わり方がとてもいい。息子を見ると、安心したような、満ち足りた顔をしていました。そして、「もう1回読んでほしいくらい(好き)」。すてきな本と出合えて、私もとってもうれしいです。(5歳7か月の男の子のママ)
ルース・エインズワースさんの作品は他にも、『しおちゃんとこしょうちゃん』、『きかんしゃ ホブ・ノブ』などが絵本化されています。少し長めのお話も聞いていられるようになったら、『黒ねこのおきゃくさま』もおすすめですよ。
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