毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、酒井駒子さんの『ぼく おかあさんのこと…』。2000年の発売以来、フランス、オランダで絵本賞を受賞するなど海外でも高く評価されてきたベストセラー絵本です。
ぼく、お母さんのことキライ。日曜日はいつまでも寝てるし、テレビのマンガ見せてくれないし、すぐ怒るし、早くしなさいって言うくせに自分はゆっくりおしゃべり。それから、それから…。
「ぼく おかあさんのこと…」という表紙の文字を読んでもらった子どもは、この後どのようなことばが続くと思うのでしょうか? 好き? 大好き? それとも…? 表紙の愛らしいウサギの男の子。よく見るとキッとした目に、腕組み、結ばれた口元。雲行きが怪しいことが伝わってきます。
ページをめくると、大きく太い文字で「キライ。」。男の子が思い切って言っているのだとわかります。読み聞かせをしているママはドキッ、子どもは年齢によって驚いたり、ニヤリとしたりするのではないでしょうか。
男の子が「キライ」と言った理由は、どの親子でも多かれ少なかれ心当たりのあることばかり。ひとつひとつは小さいかもしれないけれど、降り積もったことを言い募るうちに、ウサギの子がママに対して思っていることがあふれ出してきます。「ママだいすき」がすべてだった赤ちゃんの頃から成長し、ほんの少し複雑になってきた心。その瞬間をとらえていて、切ない気持ちにさせます。
子どもの成長した心を描くと同時に、子育て中の親の心に寄り添った絵本でもあります。このお話の母ウサギ、「朝寝坊したい」「家事をサボりたい」「何もせずに休みたい」…どのママの心にもある思いを体現しているようです。そんな自分を責めがちなママに、「それでもこんなにママを思ってる」と、ウサギの男の子は伝えているようです。そしてママは…そんな愛情のやりとりがあれば、靴下をたっぷり洗濯する力が出るというものなのです。
さて酒井駒子さんと言えば、作品の下地に黒を使った、繊細でどこか寂し気な子どもや動物の絵が印象的です。黒い下地の絵は、絵本としてはこの作品が皮切り。酒井さんの代表作のひとつ『よるくま』との絵の違いを見てみるのも、楽しみ方のひとつではないでしょうか?
<ミーテ会員さんのお声>
この絵本、いきなりお母さんのことを「きらい!」というので、娘はびっくり。でも、最後にお母さんの腕に飛び込むところで、安心したようにホッと肩の力を抜いて笑っていた。いつの間にか、いろんな気持ちを理解してるんだなーと思った。(1歳10か月の女の子のママ)
酒井さんの描くウサギの愛らしさに魅了された方は、『ゆきがやんだら』や『ビロードのうさぎ』、『しろうさぎとりんごの木』も合わせて読んでみてくださいね。
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