毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、モンゴルの民話をもとにした名作『スーホの白い馬』。モンゴルの伝統楽器「馬頭琴」の由来にまつわる物語で、日本では1967年、大塚勇三さんの再話に赤羽末吉さんが絵をつける形で絵本化されました。
舞台はモンゴルの草原。貧しい羊飼いの少年スーホはある日、生まれたばかりの小さな白い馬と出会います。スーホは馬を大切に育てますが、町の競馬大会に出た際に殿様に馬を奪われてしまいます。馬は決死の思いで脱出し、スーホのもとに戻ってきますが…。
気が合う、意気投合するといった意味の「馬が合う」ということばがありますが、これはもともと乗馬で使われたことばだそうです。馬と息が合わないと、騎手は振り落とされることもありますが、逆に息が合うと、馬が騎手の実力以上の力を発揮することがあるとか。スーホと白い馬はまさにその「馬が合う」関係ですが、それはスーホが心を込めて大事に馬を育ててきたから。人馬一体の走りは、スーホと馬の強い結びつきがあってこそのものだということが、お話の中から伝わってきます。
殿様の理不尽な仕打ちのせいで、物語は悲しく切ない結末を迎えます。スーホは白馬の亡骸で、棹の先端が馬の頭の形をした楽器「馬頭琴」をつくります。モンゴルの草原中に響くその美しい音色は、聞く人の心を揺り動かすのでした。
<ミーテ会員さんのお声>
子どもの頃に読んだことがあったものの、どんなお話だったか記憶はかなり曖昧だったのですが、息子と読み進めるうちに、権力者による理不尽な仕打ちや、主人のもとへ命がけで帰る馬の忠誠心など、かなりドラマチックな話であったことを思い出しました。懐かしさを感じると同時に、なんともいえない切なさや悲しさを感じ、絵本のもつ力を再確認した気がします。「かわいそうだね」という息子の一言も胸にきました。(5歳2か月の男の子のママ)
小学2年生の国語の教科書で読んで知っているという方も多いかと思いますが、絵本版の何よりの魅力は、素朴ながらダイナミックな赤羽末吉さんの絵です。広大なモンゴル平原が、横長の画面を生かして見事に描かれています。
赤羽さんは戦時中に内蒙古(内モンゴル自治区)を取材した経験があり、引き揚げの際に写真やスケッチの数々をひそかに持ち帰ったそうで、それが後に『スーホの白い馬』を描く上で大いに参考になったようです。絵の力を存分に感じることのできる、味わい深い一冊です。
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