イチ押し絵本情報

黒マントに黒い帽子の三人組(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.98)

2016年9月15日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 黒マントに黒い帽子の三人組

今回ご紹介する絵本は、トミー・アンゲラーさんの『すてきな三にんぐみ』。1989年に日本に紹介された、代表作のひとつです。

黒いマントに黒い帽子の、こわーいどろぼう三人組。ある夜、馬車を襲ったら、みなしごのティファニーちゃんだけが乗っていました。なんとティファニーちゃんは、誰もが恐れる三人組と一緒に隠れ家に行って…。

見開き

暗い青を背景に、ギラリと光る三白眼の三人組の黒いシルエット。赤く光るまさかり。タイトルの文字もおどろおどろしい雰囲気です。それもそのはず、彼らは犬も一目散に逃げ出すほど恐ろしいどろぼうなのです。

ストーリーの前半は、三人組がどんな悪事を働いて、恐れられてきたかに費やされています。ただ、武器は目つぶしの胡椒に銃口がラッパになっているラッパ銃、表紙で濡れ塗れと赤く光っていたまさかりは、人を傷つけるものではなく馬車の車輪を砕くもの。何回もお話を読んでもらった子どもは、三人組は人を傷つけるつもりがないことに気付くかもしれません。

注意深い子ども達同様に、三人組のやさしさに気付いたのがみなしごのティファニーちゃんです。少しも恐れることなく「おもしろそう」と、隠れ家についていきます。その時の、どろぼうの目つきのやさしいこと! ティファニーちゃんを黒いマントでくるみ、落としてはいけないと注意深く歩く姿は、赤ちゃんを授かったばかりの親そのものでしょう。

ここからは、一気に話が展開。恐ろしいどろぼうが、孤児を集め育てる慈善家に変わります。それも「子どもと出会った」というただそれだけのきっかけで。子ども達は赤いマントと帽子を身に付けるようになり、それまでの怖い印象からは想像できないほどのハッピーエンドが訪れます。子ども達がその意外性と面白さに夢中になり、「もう一回」とねだるのもうなずけます。

この作品は、アンゲラーさんの娘・フィービーちゃんに捧げられたものです。三人組同様アンゲラーさんも、子どもを授かることで自分が変わったと実感したからこそ、生まれた作品なのではないでしょうか?

<ミーテ会員さんのお声>
図書館で借りてきた『すてきな三にんぐみ』が大ヒット!
最後のページを読み終えた瞬間、「もういっかい!」コールの嵐。 以前読んでやった時には、どうやら絵が怖かったようで、一度きりしか読まなかったのですが、成長して恐怖を乗り越え、面白さに気づいたようです。
「そんなに気に入ったなら、買ってあげるよ」と言ったら、すごーく喜んでました。(3歳7か月の女の子のママ)

世の中から疎まれたどろぼうが孤児を集め育てるという風刺の効いたお話、また抑えた色味に明確な画面、洗練された構図など、大人にもファンが多い作品です。アンゲラー(翻訳によってはウンゲラーと表記)さんの他の作品に、ヘビが主人公という変わり種『へびのクリクター』や、色合いが本作と共通点がある『コウモリのルーファスくん』、戦争をテディベアを通して描いた『オットー 戦火をくぐったテディベア』などがあるので、興味をもったら読んでみてくださいね。


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