みんなの推し絵本！

vol.10 上村愛子さんの推し絵本

vol.10 上村愛子さんの推し絵本

思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本！」。今回は元フリースタイルスキー・モーグル日本代表の上村愛子さんにご登場いただき、初めて手掛けられた絵本や思い出の絵本について伺いました。

絵本『ゆきゆきだいすき』で伝えたい、雪の楽しさ

私は絵を担当しているのですが、何よりまず、子どもたちが「雪が楽しい」「雪を見に行ってみたい」と思えるような絵本にしたいと取り組みました。大切にしたのは、主人公のあいこちゃんが雪を待つ間のワクワクした表情とか、飛び込んだ新雪のやわらかさ。「雪屋さん」の私たちだからこそわかる雪の魅力が伝わっていたらうれしいです。

環境問題などの「学び」の部分は、当初考えていたよりもぐっと控えました。まず雪で遊ぶ楽しさや、雪のある世界の豊かさを絵本で味わってもらうことが、結局みんなの中の「雪のある今の自然を守りたい」という気持ちにつながるのでは思ったからです。

くり返し読むことで「雪がなくなったら困るな」と考えるようになったら、その時に「あいこちゃんのなんでなんで」のページで日本の雪について学んだり、写真で世界の雪の様子を知ったりしてほしいなと思います。QRコードを読み込めば、さらに詳しい情報にアクセスすることもできます。

あいこちゃんは私が何気なく描いていたイラストから生まれました。犬は、昔飼っていた愛犬がモデルです。絵はもともとよく描いていたので、キャラクターやシーンは頭にイメージが浮かぶのですが、それを本に載せる絵にするとなると2ステップも3ステップも違う。結局、制作していた半年間、iPadとずっとにらめっこで、最後の最後まで直しを入れていました。すごく大変でしたけれど、終わってみたら楽しかったです。

どのページも思い入れがありますが、あいこちゃんが雪でみんなと遊んでいるシーンが気に入っています。紙の白を雪に見立てて、雪に囲まれている感じを出しました。背景に入れた雪の結晶にもこだわって、ひとつひとつ形を変えています。後は、最後のオーロラのページ。雪が大好きなみんなが一堂に会した、あいこちゃんの夢のワンシーンです。

スキー仲間は、『ぐりとぐら』の森の仲間みたい

『ぐりとぐら』は中でも一番好きで何回も読んでもらいました。「こんな風に森の中でお友だちと遊んでみたいな」とか、「大きなカステラをいつか焼いてみたいな」とか思っていました。特に、ぐりとぐらが森の中で会った生き物みんなと友だちになるのが、すごくうらやましくて。

スキーをやっているといろいろなところでいろいろな人に会うんですが、「スキー楽しいね」という共通項ですぐに仲良くなれるんです。それって、絵本の中のような仲良くなり方ですよね。私はモーグルという競技に出会ったことで、ぐりとぐらのようにすばらしい仲間に出会えました。今絵本を読み聞かせてもらっている子どもたちも、いろいろな経験をして、すてきな出会いを重ねていってほしいなと思います。

また、モーグルの日本代表として世界各地を試合で転戦する中で、「日本の四季ってすごくきれいだ」としみじみ思いました。私自身は子育てをしたことはありませんが、日本の自然のすばらしさを子どもたちに伝えたいと強く思っています。

子どもたちだけではなく、お母さん、お父さんも、ぜひ一回は雪の多いところに足をのばして、自然の美しさを味わってほしいですね。難しい場合は、この絵本を見ていただいて(笑)、雪の楽しさを知るとともに、自然や環境のことを考えてもらえたらうれしいなと思います。

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