スペシャルインタビュー

絵本作家うささんスペシャルインタビュー

今回のインタビューは、東日本大震災復興支援チャリティー「震災で消えた小さな命展」を企画された絵本作家うささんにご登場いただきます。3.11の大震災では、人間だけでなく、たくさんの動物たちも命を失いました。家族同様の動物たちを失った被災者の方々の悲しみを知って、「震災で消えた小さな命展」を企画されたといううささん。被災者の方々との交流を通じて感じたことや、展覧会に来られる方々に伝えたいことなど、お話しいただきました。

絵本作家・うささん

うさ

愛知県生まれ。俳優業・詩・芝居脚本・演出などを経験しながら絵を描き続け、2003年、初めての絵本『ひとやすみ』が絵本コンテストにて大賞を受賞。それをきっかけに絵本を描くようになる。主な作品に『ひとやすみ』『おくりもの』など。『紅線(赤い糸)』『暖綿綿的贈物(そのふわふわいいな)』など、台湾や韓国で出版された絵本も。日本児童出版美術家連盟会員。
http://usa-peace.com/

被災地を訪れ、自分にできることは何かを考えた

★★★★

▲うささんの絵。タイトルは「春の匂い」

―― 「震災で消えた小さな命展」を企画したきっかけを教えていただけますか。

3月11日の地震のとき、私は千葉県の自宅で絵を描いていたんですね。地震のあとしばらく停電になったので、震災の様子をテレビで見たのは2日後だったんですが、想像を絶するような光景の連続に言葉を失いました。

その後もテレビやインターネット、新聞、雑誌などで、震災に関するさまざまな情報を目にしたんですが、何が本当に正しいのかは、被災地に行って自分の目で確かめてみないとわからないと思ったんです。それで、ボランティアとしてお手伝いさせていただきながら、宮城県沿岸部の被災地をまわりました。昨年10月のことです。

支援物資の配達などをお手伝いする中で、改めて被災者の方々の悲しみや苦しみを知りました。そしてそれと同時に、犠牲になったたくさんの命の中に、さまざまな動物の命があったことを知りました。

私の大切な家族にも、動物がいます。家族同様の動物たちとこのような形で別れ、悲しい思いをしている方々のことを知って、心が引き裂かれそうになりました。亡くなった動物たちは、大好きだった飼い主さんが自分のことでつらい思いをしていることを、きっととても心配しているでしょう。

動物たちと飼い主さんの心を、私たちが描く絵によってつなぐことができたら―― そんな思いから、「震災で消えた小さな命展」の開催を決めました。

家族同様の動物たちを失った悲しみ

絵本作家・うささん

―― 「震災で消えた小さな命展」では、被災者の方々からの申し込みを受けて作家さんたちが描いた、亡くなった動物たちの絵が展示されるそうですね。動物たちの絵の申し込みは、どのようにして募ったのでしょうか。

最初は役所に申し込み用紙を置かせてもらったり、地元の新聞社に掲載してもらったりしていたんですが、震災からまだ日が浅く、思い出すのもつらい方がたくさんいらっしゃったからでしょうか、なかなか申し込みが集まらなかったんですね。

それで、やはり自分の足で赴いて、直接地元の方たちに声をかけた方がいいと思って、改めて被災地を訪れ、仮設住宅を一軒一軒まわることにしたんです。企画内容について記したプリントをポスティングしたり、お会いした人には直にお話をしたり…… 全部で6000軒くらいまわって、募集をかけました。

―― 最終的にどのくらいのお申し込みがあったのですか。

45名の方からお申し込みいただきました。複数の動物を飼われていた方もいらっしゃるので、絵は49枚になります。犬、猫、うさぎ、インコ、金魚など、さまざまな動物たちの絵を描くことになりました。

動物たちを描くにあたって、写真をお持ちの方には送っていただいたんですが、中には津波で流されてしまって写真も何もないという方もいらっしゃったんですね。なのでそのような場合は、お電話やお手紙でお話を伺い、特徴を教えていただきました。

お話を伺う中で多かったのが、避難所にいる間は動物が亡くなった悲しみを表に出せなかった、ということ。まわりでたくさんの人が亡くなっている中、動物を亡くした悲しみはなかなか理解してもらえなかったようで…… 飼い主さんたちは、家族を亡くしたのと同じ悲しみを抱えているのに、泣くに泣けなかったそうなんです。仮設住宅に移ってから初めて家族で泣いた、というお話は、すごくたくさん伺いました。

「震災で消えた小さな命展」で、命の平等を伝えたい

「震災で消えた小さな命展」

▲「震災で消えた小さな命展」

―― たくさんの作家さん、イラストレーターの方たちが、この企画に賛同して参加されているそうですね。

日本の作家が49人、海外の作家が9人で、計58人が参加しています。日本の作家は被災者の方からお申し込みがあった動物の絵を、海外の作家は「命の平等」をテーマとした絵を出品します。

作品は愛知、宮城、岩手、東京、台湾、和歌山と巡回したあと、申し込まれた被災者の方々に贈ることになっています。動物たちの描かれた絵を通じて、飼い主さんの悲しみや苦しみが少しでもやわらいだらうれしいですね。

―― 展覧会を見に来られた方たちには、どんなことを伝えていきたいですか。

津波から逃れて避難所にたどり着いたにもかかわらず、動物であるという理由で中に入れてもらえず、失われた命もあると聞きました。

人間の命と動物の命、どちらも同じ命なのに、差をつけて扱われてしまう……それってとても悲しいことですよね。私は、津波で亡くなったたくさんの人間の命も、亡くなった動物たちの命も、その命を想う人にとっては、みんな等しく大切な命だと思っています。

この展覧会は、ただかわいい動物たちの絵を展示するというものではありません。こんなかわいい動物たちも命を失ったんだということを知っていただくことで、命の平等についても伝えていきたいですね。

被災者の方からのお手紙
(※許可をいただいて一部抜粋にて紹介させていただいています)

3月11日まで、私たち家族は、“あずき”という名のミニチュアダックスフントの母犬と、乳離れしたばかりの3匹の子犬たちとともに、陸前高田市で幸せに暮らしておりました。

あの日―― 子犬を守ろうとして暴れるあずきを連れて、祖父は先に避難所に向かいました。そして、自宅で子犬3匹をかかえていた祖母を、仕事先から帰宅した私が車に乗せ、津波に追いかけられながら山へ避難しました。

そのときが、生死の分かれ目でした。祖父とあずきが行った避難所は大津波にのまれ、大切な2つの命は奪われてしまいました。祖父の遺体は見つかりましたが、あずきは見つかりませんでした。あのとき別の場所へ避難していれば、助かったかもしれない……このような後悔は、一生消えることはありません。

そうした後悔や震災のショックもあってか、祖母は癌を再発し、先月、祖父の後を追うように亡くなりました。最期のとき、意識がもうろうとする中、「あずき、あずき」とうわごとで言っていました。とてもかわいがっていた犬でしたから……。

現在、2人と1匹の命が消えた私たち家族は、形見とも言えるあずきの子犬たちと暮らしています。なかなか前には進めませんが、残してくれた大切な命を守っていこうと思います。

動物たちの絵をきっかけに、命について親子で考えてみませんか?

絵本作家うささんの「命の平等を伝えたい"震災で消えた小さい命"」の連動企画として実施した、「動物の命と絵本」アンケートの結果はこちら

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