スペシャルインタビュー

フェリス女学院大学文学部教授・藤本朝巳先生スペシャルインタビュー

今回のインタビューにご登場いただくのは、伝承文学、児童文学、絵本学を専門とした研究に取り組まれているフェリス女学院大学文学部英文学科教授・藤本朝巳先生です。『アンソニー・ブラウンのキング・コング』など、絵本の翻訳も数多く手がけていらっしゃる藤本先生に、絵本の魅力、絵本の選び方や読み方のコツ、ご自身の読み聞かせ体験などについて伺いました。子育てママ&パパへのメッセージもいただきましたよ!

フェリス女学院大学文学部英文学科教授・藤本朝巳先生

藤本 朝巳(ふじもと ともみ)

1953年、熊本県生まれ。青山学院大学英米文学科卒業。米国ポートランド州立大学留学、白百合女子大学児童文学科博士課程修了。2007年度ケンブリッジ、アングリア・ラスキン大学客員研究員、現在、フェリス女学院大学文学部教授。著書に『絵本のしくみを考える』(日本エディタースクール出版部)、『ぞうくんはどっちを向いている?』(フェリス女学院大学)、訳書に『リベックじいさんのなしの木』(岩波書店)などがある。 藤本朝巳のホームページ http://tomo-fujimoto.jimdo.com/

絵本は子どもが初めて出会う文学であり、芸術である

『子どもに伝えたい昔話と絵本』

▲『おだんごぱん』『こびととくつや』など、ロシアの昔話やグリム童話を題材に、昔話絵本のすばらしさをわかりやすく解き明かす『子どもに伝えたい昔話と絵本』(平凡社)

―― 藤本先生は昔話や絵本の研究を専門になさっておられますが、そもそも絵本とはどういうものだとお考えですか。

絵本というと、とても易しくて、まるでおもちゃのようなものと思っている方も多いと思うんですね。もちろんそういう絵本もありますけれども、中には文学的にも芸術的にも非常に優れた絵本もあります。そう認識すれば、絵本は子どもが初めて出会う文学であり、芸術である、と私は思っています。

幼い子どもは、自分で聞きたいもの、見たいものを自分で選ぶことはできません。選んであげるのは大人です。子どもに与えるのであれば、幼い頃から本物の文学や芸術に出会わせてあげたいものですよね。

―― 子どもが生まれて初めて出会う文学・芸術として、どんな絵本を選ぶとよいと思われますか。

一番簡単なのは、長く読み継がれているものを選ぶこと。絵本のうしろの奥付を見れば、初版が何年なのか、そこから何度刷り直されているのかがわかります。何十年も前から何十回、何百回と刷り直されている絵本は、時間が証明した名作と言えるでしょう。

きちんと選びたい方は、ぜひ文章や絵に注目してみてください。絵本の文章は、子どもが自分で読むよりも読んでもらうことの方が多いと思うんですね。ですから、耳で聞いてわかりやすい文体であることが大切です。それを判断するためには、声に出して読んでみること。そして、読みやすいか、子どもにわかる文章かどうかを確かめてほしいですね。

絵については、絵本は「めくる」という動作を必要とする表現媒体ですから、そこをしっかり意識して作られたものがよいと思います。ページをめくると世界が広がったり、何かが変化したり……おもしろくてめくりたくなる、というのが基本です。私はこれまで、さまざまな絵本の表現を研究してきましたが、名作と呼ばれる絵本は、絵の運び方や絵と文章の配置などもよく工夫されているんですよ。

大切なのは、子どもと楽しい時間を共有すること

『ぞうくんはどっちを向いている?-楽しい絵本学』

▲絵本の魅力を舞台裏から考える一冊『ぞうくんはどっちを向いている?-楽しい絵本学』(フェリス女学院大学)

―― 読み手がどうめくるか、めくるタイミングやスピードというのも、絵本の味わいに深くかかわってきそうですね。

そうですね。映画やアニメはじっと座ってただ見ているだけで楽しめます。つまり受け身でいいのですが、絵本は読み手がめくらなければ先に進みません。どうめくるかは読み手に任されています。そういう意味では、絵本は作家と読み手が一緒になって積極的に作りあげるものなのです。

子どもに読んであげるときは、機械的に文章を読んだらめくる、読んだらめくる……を続けるのではなく、絵に含まれる情報を読み取る時間や絵を楽しむ時間も、十分にとってあげるといいですね。ぶっつけ本番で読むのではなく、自分で一度じっくり読んで味わって、どのくらいのペースでめくるといいかを考えてから子どもに読んであげる、というのが良い読み方だと思います。

とはいえ、これは理想的な話であって、子育て真っ最中の方々は時間もないので、なかなかそうはいきませんよね。私も子育てを経験しましたから、よくわかります。

―― そこまでできない場合、絵本の読み聞かせで大切にすべきことは何だと思われますか。

大切なのは、楽しく読むことです。子どもと一緒に楽しい時間を共有できるというのは、とても幸せなことですよね。

読み方は、繰り返していれば自然と身についていきます。下手でもいいから、まずは一緒に楽しもうという気持ちで読んであげてください。

子育ての期間はあっという間に終わります。読んであげようと思ったときには、子どもはもう見向きもしてくれないかもしれません。育児は、よく「抱っこしてあげられる間に抱っこしてあげなさい」と言われますが、それと同じように、聞いてくれる間にたくさん読み聞かせをして、楽しい時間を共有してほしいですね。

絵本の時間は、親にとっても幸せなひととき

―― 藤本先生も、お子さんに読み聞かせをたくさんされたのですか。

たくさんしましたよ。恩師である小澤俊夫先生の「日本の昔話」全5巻(福音館書店)を、3人の子どもにそれぞれ読んでやったのが、一番の思い出です。赤羽末吉さんの絵を一緒に見ながら、第1話から第301話まですべて読みました。

それぞれ5歳ぐらいの頃から読み始めたんですが、末っ子に読んでやったときは、長男と長女も一緒に聞いてくれて…… 私の人生で一番幸せな時間だったのではないかと思いますね。暑いときも寒いときも、寝る前に布団の上で読んでやっていました。子どもたちもきっと覚えているはずですし、その体験は、彼らの魂の中に一生残り続けていくんじゃないかと思います。

―― 親にとっても子にとっても、思い出に残る大切なひとときですね。

息子の歯形のついた絵本とか、破けてぼろぼろになった絵本とか、うちにはいっぱいあるんですよ。それらは親子一緒に過ごした証ですから、今でも大切にしまってあります。

絵本は一生ものってよく言いますが、その通りだと思います。子どものときに読んでもらったお気に入りの絵本を、自分が親になったときに今度は自分が子どもに読んであげる。おじいちゃんおばあちゃんになったら、孫に読んであげる。子どもが大きくなって、家を出るときに持たせてやる……。たとえ傷んでいても、そこには愛情がいっぱい詰まっているわけですから、一生大切にしていきたいものですね。

どうぶつえん シェイプ・ゲーム
おんぶはこりごり アンソニー・ブラウンのキング・コング

▲藤本先生が訳された、イギリスの絵本作家アンソニー・ブラウンさんの絵本『どうぶつえん』(平凡社)、『シェイプ・ゲーム』(評論社)、『おんぶはこりごり』(平凡社)、『アンソニー・ブラウンのキング・コング』(平凡社)。藤本先生は他にも数々の絵本の翻訳を手がけていらっしゃいます。

―― 最後に、子育て真っ最中のお母さんお父さんにメッセージをいただけますか。

今は大変でしょうけれど、子育てをできる時間というのはあっという間に過ぎてしまいます。ですから、今を大事にしてください。そして、1日3分だけでもいいですから、絵本を読んであげてください。

特にお父さんに絵本を読んでもらいたいですね。疲れて帰ってくるかとは思いますが、お母さんだって大変なんですから、子どもと一緒にお風呂に入ったり、絵本を読んであげたり、子どもと一緒の時間をお母さんと分担して持っていただきたいなと思います。

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