絵本作家インタビュー

vol.41 絵本作家 風木一人さん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、文章専門の絵本作家として活躍する風木一人さんです。『ながいながいへびのはなし』の、あまりにも長いへびの見せ方を思いついたのをきっかけに、絵本作家になられたという風木さん。絵本づくりで大切にしていることや、新作の赤ちゃん絵本の制作裏話など、たっぷりお話しいただきました。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら

絵本作家・風木一人さん

風木 一人(かぜき かずひと)

1968年、東京都生まれ。絵本の文章作家、翻訳家。主な作品に『たいようまつり』(イーストプレス)、『はっぱみかん』(佼成出版社)、『ぷしゅ~』『おしゃれなのんのんさん』(岩崎書店)、『かいじゅうじまのなつやすみ』(ポプラ社)、『にっこり にこにこ』『わーらった』(講談社)などがある。『ながいながいへびのはなし』(小峰書店)はフランスと韓国でも翻訳出版。訳書に『とりとわたし』(あすなろ書房)がある。
絵本で会いましょう http://www.geocities.jp/kzk227/

テーマは、アイデアが呼んできてくれる

はっぱみかん たまごのカーラ

▲葉っぱが自慢のみかんが主役『はっぱみかん』(絵・山口マオ、佼成出版社)と、カラが旅に出るお話『たまごのカーラ』(絵・あべ弘士、小峰書店)

子どもの頃、段ボールに入ったみかんの中に一つだけ、葉っぱのついたみかんがあって、兄貴と取り合ったことがあるんですね。その記憶がもとになってできたのが『はっぱみかん』です。

たくさんのみかんの中で、ひとつだけ葉っぱのあるみかんの話なんですが、それは自然と「自分は他の人と違うのでは?」みたいなテーマに結びついてくるんですよ。違うことに優越感を覚えることもあれば、逆にコンプレックスになることもありますよね。

『たまごのカーラ』は、卵の殻が自立して、手と足が生えて動き出したらおもしろいなと思ってつくった絵本なんですが、これもどうしても親離れ子離れみたいなテーマに自然とつながってきちゃうんですよね。

どちらも、最初からそういうテーマで書こうと思ったわけではなくて、アイデアがテーマを呼んでくるんです。自然と結びついてきてしまうといっても、もともと僕の中にそういう思いがあるから結びつくのであって、思いつきのアイデアと、もとからあったテーマがつながって絵本になったということなんですけどね。

こういうテーマで書きたいと思って無理矢理書いても、きっとなかなかいい絵本にはならないんです。テーマを呼んできてくれるような、いいアイデアを思いついたとき、作品にできるんだと思います。

絵本の文章作家としての、難しさとおもしろさ

『ぷしゅー』

▲浮き輪だけでなく、バスに電車にレストラン、いろんなものが「ぷしゅー」となってしまう『ぷしゅー』(岩崎書店)。最後はなんと……。絵は石井聖岳さん。

絵本をつくるときは、まず文章で表現して、それに絵を合わせていくのではなく、最初から絵と文章を一体化した形で考えています。

ただ、僕は絵を描かないので、未完成の状態で出版社に持ち込むことになるんですね。その点は、絵と文章の両方を自作される方と比べると、ちょっと難易度は高いかもしれません。文章だけだと、編集の方もなかなかできあがりを想像しにくいんですよ。なので初めの頃は、本番を描くつもりではない旨を伝えた上で、各ページにどんな絵が入るのかわかるように、ラフをつけて持っていくことが多かったですね。

画家さんは、こちらから指名させていただく場合もあれば、編集の方に候補をあげていただいて、相談して決めていく場合もあります。どういう絵がいいなというイメージは、常にあるんですけどね。

『ながいながいへびのはなし』については、出版社に持っていく前から、高畠純さんの絵がいいなぁと考えていました。へびってあまり人気のある動物とは言えないですけど、高畠さんが描くと、へびが苦手な方でも好きになってしまいそうな、人のいい感じのへびになるんじゃないかと思っていたんです。

『ぷしゅ~』なんかは、もし僕が絵も描く人で、僕ひとりでつくっていたら、もうちょっと怖い感じの絵本になっていたかもしれません。石井聖岳さんが上手くコントロールしてくれたので、楽しい絵本に仕上がりました。

新作の『にっこり にこにこ』『わーらった』は2冊とも市原淳さんの絵ですが、それ以外だと、僕の絵本は1冊ずついろんな画家さんと組んでつくっているんです。絵本に限ったことではないですが、人がつくるものというのは必ず、つくり手のどこかを反映しているんでしょうね。僕の中のテーマが自然と絵本に出てくるのと同じように、画家さんの何かも反映されてくるはずで、その両方が混ざり合うというのが、またおもしろいところだと思います。

絵本の読み聞かせは、おおらかな気持ちで楽しもう

絵本作家・風木一人さん

ときどき書店のイベントなどで、子どもたちを前に読み聞かせをすることがあるんですけど、そのときに意識しているのは、わりとゆっくりめに読むこと。テキストの短いものの場合は特に、絵もじっくり見てもらいたいので、ゆっくりと読むようにしています。

読み聞かせといっても、大勢の前で読むのと、家で一対一や一対二で読むのとでは全然違いますよね。家での読み聞かせは、読む人と読まれる人が楽しむってことが一番。慣れないうちは、どう読んだらいいのか悩むかもしれませんが、やりながら探っていけばいいと思うんです。一律にこうやるといいですよっていうのは、なかなかないですよね。

読んでいるのにどんどんページをめくってしまう、という話もよく聞きますが、めくらせておけばいいんです。そのうち聞くようになるだろうっていうくらいの、おおらかな気持ちで楽しんでくれたらいいなと思います。

この絵本を読むとうちの子は何ができるようになるだろう、どれだけ賢くなるだろう、何を覚えるだろう……なんて風に短い目で考えずに、まずは絵本を楽しみましょう。子どもが小さいうちは、「遊ぶ」と「学ぶ」は一緒。たくさん遊んだ子はいろんなことを自然と学びます。遊びっていうのは楽しくてこそですから。難しく考えずに、絵本もただ楽しんでくれればいいんです。親にとっても子どもにとっても、絵本の時間が楽しいひとときであれば、もうそれだけですばらしいことですから。


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