絵本作家インタビュー

vol.32 絵本作家 よしながこうたくさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、強烈なインパクトを放つ絵と博多弁バージョンの文で人気の『給食番長』の作者・よしながこうたくさんです。よしながワールドの原点となる子ども時代についてのあれこれや、『給食番長』制作エピソード、絵本に込めた思いなど、笑いを交えながら楽しくお話しいただきました。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら

絵本作家・よしなが こうたくさん

よしなが こうたく

1979年、福岡県生まれ。九州産業大学デザイン科卒業。18歳から作家活動を始め、その後イラストレーターとして雑誌、テレビ、CDジャケット、雑貨等で国内外問わず活動。2007年に『給食番長』(長崎出版)で絵本作家デビュー。シリーズ続刊に『飼育係長』『あいさつ団長』(同じく長崎出版)。そのほかの絵本作品に『かみなり』(文・内田麟太郎、ポプラ社)、『おふろだいすき!ぷっぺ』(小学館)がある。福岡を拠点に活動中。 http://www.edomacho.com/koutaku/

子ども心をくすぐる、絵の中の“いたずら”

『おふろだいすき! ぷっぺ 』

▲よしながさんの新作は、テッポウウオの「ぷっぺ」が主人公の痛快銭湯バラエティ絵本『おふろだいすき! ぷっぺ』(小学館)

絵本の絵を描くときは、たいてい隙間なく描き込んでます。隙間をあけると紙代がもったいないし……僕って、さびしがりやの貧乏性なんで(笑) 締切がなかったら、もっと描き足しちゃうと思います。だって、子どもたちってちっちゃいとこまでよく見てるじゃないですか。ストーリーがどうってことより、絵だけ見てるんですよ。読み聞かせしてても、ここになんとかがおるー!とか、よく言ってますからね。

だから、どのページでも、細かいところでいろいろと“いたずら”してるんです。ラフの段階で描いてるものもあるんですけど、時には担当編集者に内緒で描き足しちゃうものもあって。あんまり目立ちすぎると「これは何!?」って怒られちゃうんですけどね(笑) 福岡で兄妹と一緒に、事務所と併設してカフェも経営してるんですけど、カフェによく来るお母さんや子どもたちにも言われるんですよ。「ちっちゃいとこ、期待してますよ!」って。

僕の絵本はインパクト勝負!ってことで、構図も派手だし、絵もこんな感じなんですけど、こういう絵本が何冊も横並びで平積みになってると、二日酔いのときなんかは我ながらクラッときますよね。うわっ! 目が回る!!って(笑) でも、子どもは大人よりもスタミナが上だから、全然平気みたい。「うちの子はこういう絵本は読みません」っていうお母さんもいるけど、見やすい絵本とか、かわいい絵本を見せたいっていうのは、親のエゴなんじゃないかなって思うんですよ。あんまり決め付けないで、子どもに絵本を選ばせてあげてほしいですね。

絵本で子どもを感動させる それが僕の役目

絵本作家・よしなが こうたくさん

絵本の仕事を始めて2年なんですが、ストーリーを考えるのも絵を描くのもまだまだ大変です。夜、描き終えた直後に見ると、いやぁ俺うめぇ!なんて自分に感心するんですけど、朝になって見ると、うわぁ下手だなぁ……とか、ずっとその繰り返しで。ある意味、闘いですよね。

でも、読み聞かせをして子どもたちが喜んでる姿を見るときは、すごく楽しいんです。絵本作家になるまでは、絵を描く理由って、自分のためだけだったんですよ。コミュニケーションのため、とか、天下とってやる!みたいな功名心とか、モテるための武器とか(笑) イラストの仕事をしてたときも、すごいの描けたなとか、驚かせてやったぞ!なんてことはあっても、それほどの満足感は得られなかったんです。でも、絵本の場合、喜んでくれる人がいるじゃないですか。初めて目的を持ってやれたなって気がして。これはすごくありがたいことですよね。

ときどき中学で教師をしている友人に呼ばれて、授業をしにいくことがあるんですけど、中学1年生くらいまでって、笑顔に邪気がないんですよ。未来が不確定なんだなと思うと、それはすごいな、子どもは人類の宝だ!と思うようになって。そんな人類の宝たちが、僕の絵本を見て育っていっちゃったりするわけですから、責任重大ですよね。

僕は子どもの頃、戦隊ものとかヒーローものとかが大好きで、たくさん感動させてもらいました。今考えてみると、ああいうものをつくり出していた大人たちってすごいなと思うわけで。だから今度は僕が、その恩返しとして、絵本を通じて子どもたちに何かできたらなと思うんですよ。今は昔より、子どもたちがワクワクするようなヒーローものとか少なくなってしまってる気がするんですけど、そういうのがなくなっちゃうとまずいでしょう。なくならないとは思うんですけど、自分も絵本作家としてその一端を担えたらうれしいですね。

少年よ、絵本を読もう!

絵本作家・よしなが こうたくさん

実はここ2年くらい、テレビを見てないんですよ。なんだか情報量が多すぎて、集中できなくなっちゃって。その代わりによく聴いてるのが、落語。めちゃくちゃおもしろくて、ハマっちゃって。それで日本の文化にすごく興味を覚えて、歌舞伎とかも観に行くようになりました。落語絵本は人気の方がいらっしゃるんで、やれないなと思ってるんですけど、言葉の転がりとかはすごく勉強になりますね。

今後は妖怪ものとか、日本のSFみたいな絵本をつくってみたいですね。日本文化についてはまだまだ勉強が必要ですけど、ほかにはない、自分だけしかできないようなのをやってみたいなと思ってます。

最近思うんですけど、小学校1年生くらいになると、男子って絵本離れしていく傾向があるんじゃないかなと。「えー、絵本なんて読んでるの? 子どもの見るもんだよ」なんて感じで、一気に漫画の方に移行していくんですよね。でも、小学校1年生くらいで絵本を卒業しちゃうのは、すごくもったいないなと思って。

全ページがカラーの絵で構成されてる本って、絵本のほかになかなかないじゃないですか。絵本って、贅沢な本なんですよ。見てる人にものすごい感動を与えたりもしますしね。だから少年たちにも、絵本に戻ってきてほしいなと。そのためにも、いろんなところに足を運んで、僕の絵本を届けていきたい。つくったからには全人類に届けたいと思ってるんで、がんばります!


ページトップへ