絵本作家インタビュー

vol.25 絵本作家 なかやみわさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『そらまめくんのベッド』でおなじみの絵本作家・なかやみわさんです。「そらまめくん」以外にも、「くれよんのくろくん」「ばすくん」「こぐまのくうぴい」など、たくさんの親子に愛されるキャラクターを生み出しているなかやさん。絵本制作エピソードやご自身の子育てについて、楽しくお話しいただきました。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら

絵本作家・なかや みわさん

なかや みわ

1971年、埼玉県生まれ。女子美術短期大学造形科卒業。企業のデザイナーを経て、絵本作家に。作品に「そらまめくん」シリーズ(福音館書店・小学館)、「くれよんのくろくん」シリーズ(童心社)、「こぐまのくうぴい」シリーズ(三起商行)、「おばけのぽぽ」シリーズ(ブロンズ新社)、「きりかぶ」シリーズ(偕成社)など多数。『くれよんのくろくん』で第12回けんぶち絵本の里大賞受賞。

子ども時代の思い出から生まれた『くれよんのくろくん』

くれよんのくろくん くろくんとふしぎなともだち

▲人気のくろくんシリーズ『くれよんのくろくん』『くろくんとふしぎなともだち』(いずれも童心社)

そらまめくんのあと、次は何を描こうかなと画材を広げていたときに、目に飛び込んできたのが、クレヨンでした。黒だけがあまり減っていないのをみて、「なんだかこの子、ちょっとかわいそうだな」と感じたんですよ。そのとき、くろくんの引っ込み思案な性格が、ふと頭によぎって……それなら今度の絵本では、クレヨンの黒が脚光を浴びる話にしたいなと思ったんです。

私には、クレヨンの黒といえばあれだ!という思い出がありました。それは、小学校3年生の頃に挑戦した、スクラッチの技法。夏休みの図画工作で、母から教えてもらったこの技法で花火の絵を描いて、賞状をもらったことがあるんです。それで、最後は花火を描いてハッピーエンドというお話にしたいなと思って、そこからつなげていく感じで展開を考えました。キャラクターが固まると、わりと苦労せずにお話ができあがっていくんですよ。

今後は、そらまめくんやくろくんのシリーズだけでなく、新たなチャレンジもして幅を広げていきたいですね。そのために最近、日本画の勉強をしたんですよ。日本画というと古典的なイメージかもしれませんが、ポップな絵も描けるんです。日本画の独特な風合いの画材を使いながら、今の子どもにも受け入れられるような絵本をつくっていけたらなと思っています。

絵本は遊び心が満載 子どものペースで楽しんで

絵本作家・なかや みわさん

絵本って、それぞれのペースでゆっくり見ることができるでしょう。ちょっと前のページが気になったら、戻ってもいいわけですし。見れば見るほどいろんな発見があるのもうれしいですよね。ストーリーとは関係ないところで、同じ人がどの場面にもいて、最後のページで何かしていたりとか、そういう隠し絵的な遊び心が満載なんです。

テレビだと、スピードも速いし、さっきの場面を見たいと思ってもすぐ戻れませんよね。子どもも個人差があって、それぞれでペースも違うので、ゆっくり時間をかけてその子のペースに合わせて楽しめるというのは、絵本の大きな魅力かなと思います。

うちの子に読み聞かせをするときは、子どもが好きな本を1冊と、私が選んだ本を1冊、読むことが多いですね。うちの子は電車が大好きなので、自分で選ばせると図鑑みたいな感じの電車の本ばかりになってしまうんですよ。でも、物語を通じて疑似体験をしたり、登場人物の気持ちを読み取ったりするのも大事だと思うので、私はお話のある絵本を選ぶようにしてるんです。最近昆虫に興味を持っているなと思う節があれば、昆虫のお話を読んであげる、といった感じで、そのときどきの子どもに合う絵本を読むようにしていますよ。

お母さんには誇りを持ってもらいたい!

子どもを産む前まで、私は「しつけの絵本なんているのかな」って思っていたんです。でも、子どもを産んで子育てをするようになってから、考えが変わりました。うちでも、ノンタンのシリーズには非常にお世話になったんですよ。しつけの絵本って、子どもも楽しめるし、親も楽になれるし、本当に貴重なんですよね。これは子育てを経験しなければ、わからなかったことかもしれません。そんな経験を生かしてつくったのが、「こぐまのくうぴい」のシリーズ。子どもにというよりも、お母さんを応援したくてつくった絵本なんですよ。

おはよう くうぴい すきすき はみがき
おやすみ くうぴい おふろであわあわ

▲なかやさんが、自身の子育て経験をもとに描いた「こぐまのくうぴい」シリーズ。『おはよう くうぴい』『すきすき はみがき』『おやすみ くうぴい』『おふろであわあわ』(いずれも三起商行(ミキハウス))。ほか『トイレですっきり』『ぱくぱく くうぴい』『なかよく じゅんばん』『えらいね くうぴい』の全8作。

お母さんって、本当に大変なんですよね。毎日赤ちゃんと一緒で、ぎゃーぎゃー泣かれるし、相談する相手もいないし、家事にも追われるし、思うように外にでかけることもできないし……なんだか疎外されているような感じで、みじめになってしまうこともあると思います。でも、お母さんには誇りを持ってもらいたいんですね。なかなか当事者だと気づかないかもしれないですけど、子育ての大変な時期は本当に一瞬です。だから、赤ちゃんがそばにいる幸せをかみしめながら、楽しんで有意義な時間を過ごしてもらいたいなと。育児って、いやだなと思っても、楽しいなと思っても、やることは変わらないでしょう。だったら少しでも気持ちを切り替えて、こんなかわいい時期の子どもを私ひとりで独占してるんだ!という風に考えて、楽しんでしまえばいいんじゃないかなと思います。

私の場合は、子どもが生まれてから仕事が忙しくなってしまったので、わりと早いうちから保育園に預けていたんですね。無認可の保育園で、かなり長い時間預けられるもので、ずるずると仕事ができてしまって……だからその頃は、子どもと接する時間が少なかったという気がしてるんです。3歳からは幼稚園に入れたんですけど、幼稚園だと働いているお母さんは少ないので、行事とかもいろいろあって大変なんですね。なのでそのときは、思い切って仕事の仕方をがらっと変えました。仕事はあまり精力的にできませんでしたが、その分子どもとしっかり向き合うことができたので、よかったですね。

働きながら子育てと家事をするってとても大変なことですけれど、仕事を持っているお母さんには、自分の仕事にも誇りをもって、続けていってほしいですね。私も先輩ママから教わって、自分でも経験して感じたんですが、だんなさんとも協力して、うまくやりくりする工夫をしながら、あまり完璧を求めないでやるってことが大事だと思います。


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