絵本作家インタビュー

vol.20 絵本作家 あいはらひろゆきさん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、累計100万部を超える人気シリーズ「くまのがっこう」の作者、あいはらひろゆきさんです。あいはらさんが絵本の魅力に気付いたのは、お子さんが生まれてからとのこと。『くまのがっこう』誕生エピソードのほか、読み聞かせや子育てで大事にしたいことなど、たっぷりと語っていただきました。
今回は【前編】をお届けします。 (【後編】はこちら→

絵本作家・あいはら ひろゆき

あいはら ひろゆき

1961年、宮城県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大手広告代理店のマーケティングプランナーを経て、2000年バンダイ入社。バンダイキャラクター研究所所長として数々の調査研究に従事するかたわら、絵本作家、エッセイストとしても活躍。主な作品に、「くまのがっこう」シリーズ(ブロンズ新社)、『りんちゃんとあおくん』(ポプラ社)、『おひさまむらのこどもたち』『ラベンダー』(教育画劇)、「フラニーとメラニー」シリーズ、「くまのこミン」シリーズ(講談社)、子育て本『だれだってネオパパ』(岩崎書店)などがある。

親になって知った絵本のすばらしさ

1999年に女の子が生まれて、僕は新米パパになりました。さて何をしようかと考えたときに、最初に浮かんだのが絵本。何を買っていいかわからなかったので、いろいろ調べて有名な本を70~80冊、一斉にどーんと買い揃えたんです。それで、0歳のうちから読み聞かせを始めました。

僕自身は小さい頃に絵本を読んだ記憶がほとんどなかったんですね。だから絵本とこれほどまでに向かい合ったのは、このときが初めてのようなもので。子どものために読み聞かせをするうちに、絵本っておもしろいなぁ、深いなぁと、絵本のすばらしさに触れていきました。

実は僕、子どもの頃から作家志望だったんです。でも結局自分の書きたいものが見つけられないまま、なんとなく夢をあきらめてしまっていたんですね。それが、子どものために絵本を読んでいるうちに、自分の書きたかったものはこれかも!と思うようになって。それで、自分ならどういう絵本をつくれるだろうと思って、当時同じ会社でデザイナーとして働いていたあだちなみさんに声をかけて、絵本をつくってみました。それが『くまのがっこう』なんですよ。

保育園で見た子どもたちの日常が『くまのがっこう』に

うちは共働きで、子どもは1歳になる前から保育園に通っていました。妻もかなり忙しいので、朝はほとんど僕が送って、帰りも交代で迎えに行ってました。保育園の中まで入っておむつがえをしたり、群がってくる子どもたちと一緒に遊んだりして、当時は2歳前後の子どもたちをみんな自分の子みたいな感じで見ていましたね。そのくらいの年の子って、頭もおしりも大きくて、とことことこってみんなで連なって園庭に出て行ったり、みんなでわいわい給食を食べたりする様子とかを見てると、まるでくまのぬいぐるみみたいにかわいいな、と思っていたんです。

絵本をつくろうとあだちなみさんに声をかけたとき、彼女はシュタイフの仕事をしていたことがあって、くまのぬいぐるみが好きだったので、くまだったら描けますと言われたんですね。それで、ラフでいろんなくまの絵を描いてもらったんですけど、そのたくさんのくまたちが、保育園で見た子どもたちのイメージと重なったんです。これはもう「くまのがっこう」だよなと。

『くまのがっこう』

▲あいはらさんのデビュー作でもある、シリーズ第一作『くまのがっこう』(ブロンズ新社)

だから「くまのがっこう」シリーズは、僕が保育園で見た子どもたちの何気ない日常がベースになっています。だいたいは、朝起きてから寝るまでの1日のお話。生きることって何気ない毎日の繰り返しで、ドキドキワクワクすることなんてそれほどないんですよね。でもそんな日常こそが大事なんだと、保育園の中の生活を見ていてすごく感じたんです。僕自身も何気ない毎日を幸せだと感じていたいし、子どもたちにも「生きるってそういうことだよ」と説教がましくなく伝えられたらいいなと思います。

主人公のジャッキーは、自分の子どもが女の子だからというのもあって、迷わず女の子と決めました。日々娘と接する中で感じている思いが、作品にも反映されますからね。読者の方からのハガキで、「おにいちゃんたちとジャッキーというのは、あいはらさんとお嬢さんの関係なのでは?」なんてときどき言われるんですが、鋭いなぁと(笑) 特に意識的にそうしたつもりはないんですが、いたずらしたり無茶したりして最後には泣いてしまう妹と、さんざんひっぱりまわされて、それでも泣かれれば助けに行くおにいちゃんたちというのは、娘と父親の関係に近いかもしれませんよね。

納得するまで何度もやりとり―― あだちさんとの絵本づくり

▲2009年1月下旬発売のあいはらひろゆきさん(文)、あだちなみさん(絵)の新作『ジャッキーのたからもの』(ブロンズ新社) 松屋銀座「くまのがっこう絵本原画展」にて先行発売

ほかの絵描きさんと一緒に絵本をつくるときは、お話を描いたあとは基本的にお任せするんですが、あだちさんとの絵本づくりは全然違います。

話ができあがったらまず最初にあだちさんに読んでもらって、好きか嫌いかを聞くんですね。嫌いな話を描いてもいい絵にならないので。その後ラフが上がってきたら、そこからまた話し合いです。ラフを固める段階で、二人で物語や絵を徹底的にいじるというのが僕たちの絵本作りの特徴ですね。流れ的に単調になってないかとか、ジャッキーの気持ちがこの絵で伝わるのかとか、ここにねずみが出てきたらかわいいいよねとか、ありとあらゆることを、編集者さんは挟まず二人でとことん検討して、シーン展開を変えたり、描き直したりするんです。

1月に出る新作『ジャッキーのたからもの』では、ジャッキーが自転車でおにいちゃんたちを探しにいくシーンが少し単調だったんですが、「迷路にしたらおもしろいんじゃない?」という僕の思いつきで、独立した迷路としても楽しめるように直しました。何度も話し合ってつくりあげていくのはしんどいですけど、そうやってつくる絵本はその分愛情もこもるし、話し合ううちにいろんなアイデアも湧いてきて、すごく完成度が高いものに仕上がるように感じています。

絵本を読むときって、最初はストーリーを追うけれど、何回も読むうちに、「こんなところにねずみがいる!」とか、ディテールを見るようになるじゃないですか。だから、主に僕の役割なんですけど、いろいろとサイドストーリー的に小ネタも盛り込んでいきます。『ジャッキーのパンやさん』では、2羽の鳥がページを追うごとに近づいていって、最後みんなが寝るシーンでは、お布団のところで寄り添っているんですよ。こういうのってたぶん1回読んだだけでは気付かないんですけど、発見するとうれしくなって、親子の会話もはずみますよね。そんなところも楽しんでもらえたらうれしいです。


……あいはらひろゆきさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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