絵本作家インタビュー

vol.13 絵本作家 どいかやさん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェ インタビュー」。今回は、「チリとチリリ」シリーズなどでおなじみの絵本作家・どいかやさんにご登場いただきます。自然と生き物たちをこよなく愛するどいさん。色鉛筆の優しいタッチで描かれる温かな色彩の世界は、自然に囲まれた暮らしの中で生まれたものばかり。絵本づくりや毎日の暮らし、読み聞かせの思い出などを語っていただきました。
今回は【前編】をお届けします。 (【後編】はこちら→

絵本作家・どい かやさん

どい かや

1969年、東京都生まれ。東京造形大学デザイン科卒業。絵本のワークショップ「あとさき塾」出身。主な作品に「チリとチリリ」シリーズ(アリス館)、『パンちゃんのおさんぽ』『やまねのネンネ』(BL出版)、「チップとチョコ」シリーズ(文溪堂)、「トラリーヌ」シリーズ(偕成社)、「ねずみちゃんとりすちゃん」シリーズ(学研)、『うさぎのルーピースー』(小学館)、『かえるのピータン』(ブロンズ新社)などがある。関東近郊の山の中で、夫と6匹の猫とともに暮らしている。

中学時代、ある1冊の絵本との出会い

どいかやさん『チップとチョコのおでかけ』

▲どいかやさんのデビュー作『チップとチョコのおでかけ』(文溪堂)

私は子どもの頃、絵本をそれほどたくさん読んでいたわけではありませんでした。絵本を初めて意識したのは、中学1年生のとき。なぜか友達が学校に絵本を持ってきたんです。レイモンド・ブリッグズの『さむがりやのサンタ』でした。その絵本がすごくおもしろくて。こんなおもしろい絵本があるんだって思って、自分のおこづかいで初めて絵本を買ったんです。同じ絵本を。それは今でも大事にしています。絵本との出会いの1冊ですね。

レイモンド・ブリッグズの絵本はその後、同じシリーズの『サンタのなつやすみ』もおこづかいで買いました。その2冊を買っただけなんですけど、自分は絵本好きみたいに思い込んでいたので、美大では絵本クラブに入ったんです。初めての絵本はその当時つくりました。絵本って今は人気ですけど、当時学生は絵本にそれほど興味を持っていなかったと思います。だから絵本をつくってるというと珍しがられました。でも私には、絵本づくりがただただ楽しかったんです。クラブ以外でも課題を絵本の形で仕上げたりして、大学の4年間で20冊以上は絵本をつくったと思います。

だけどその頃は、絵本作家になろうとは考えていませんでした。絵本作家っていうものが仕事として成り立つとは思ってなかったし、絵を描く仕事は当時、絵描きさんとかイラストレーターとかデザイナーしか知らなくて、そういう方向を夢見ていました。大学卒業後、就職した会社をすぐ辞めてしまったときは、アルバイトでもしながらイラストでも描いていこうと思ったんですが、いざ描こうとすると、1枚の絵では自分の気持ちを表現しきれないなと思って……そのときに思い出したのが、絵本だったんです。

それで、トムズボックスの土井章史さんたちが主宰する絵本のワークショップ「あとさき塾」に通うようになって、そこから絵本作家としての道を歩み始めました。デビュー作は1996年の『チップとチョコのおでかけ』(文溪堂)です。

あふれだす思いを絵本にのせて

絵本作家・どいかやさん

私にとって絵本は、普段の生活の中であふれてくる思いを表現するためのもの。詩に近いんじゃないかなと思ってます。

だから、次の作品をつくらなくちゃと焦ることは全然ないです。絵本をつくることが目的ではないので、描きたいことがなければ描く必要はないって思ってます。これはすばらしいとか、なんて素敵なんだとか、そういうとどめておけない感情があったときに、それを言葉にして、絵をつけるということが私の絵本作りです。

自分のわがままにつくっている絵本なので、それに共感して読んでくれる人たちがいるというのは奇跡だなと思って。紙というすごく大事な資源を使わせてもらって絵本をつくっているので、これからも自分の思いには嘘をつかず、正直に描いていきたいです。

空想から生まれた「チリとチリリ」シリーズ

どいかやさん『チリとチリリ』

▲人気シリーズの第一作『チリとチリリ』(アリス館)

『チリとチリリ』は、車で出かける途中の山奥で感じたことを絵本にしました。大自然の中で、自分の無力さを感じたんですね。自分はなんてちっぽけなんだ、人間なんてわかってないことだらけなんだろうな、なんてふと思ってしまったんです(笑)。だからこんな森の中には、私たちが知らないあんなことやこんなことがあるかもしれない……そんな空想から生まれたのが、森の喫茶店やパン屋さん。海の中で貝殻のソファに座ったりとか。こうだったら楽しいな、こんなすばらしいことがあるかもしれないよ、という思いを描いたシリーズです。

実際には存在しないような空想の食べ物も出てきますけど、こんなのがあったら食べたいなと思うものを描いています。絵本なら、たとえつくれなくても、自分が食べたいもの、おいしそうなものを描けますからね。

チリとチリリがおかっぱなのは、私は子どもの頃、おかっぱにされててすごくいやだったんですけど、大人になってから小さな子どもを見ると、おかっぱが一番かわいいなと思えてきて(笑)。

絵本をどう読んでほしいかと聞かれる事がありますが、正解は別にないですからね。みなさん本当によく読み込んでくださっていますし、いろんな発見をしてくださるし、私以上に想像をふくらませて下さったりしてすごくうれしいです。

「チリとチリリ」シリーズもそうですが、私の絵本は小さな生き物がチラホラと描かれているものがあります。そういうのは素通りしてしまう人も多いですけど、子どもは気づいてくれることが多いです。見えにくいけれどそういう数えきれない生き物の中の、私たちはほんの一部という思いはこっそりと、込めています。


……どいかやさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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