絵本作家インタビュー

vol.63 絵本作家 のぶみさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、「しんかんくん」シリーズや『ぼく、仮面ライダーになる!』『おひめさまようちえん』などでおなじみの絵本作家・のぶみさんです。これまでに100冊を超える絵本を出版されてきたのぶみさん。波乱万丈の人生や、夢を叶えるまでの道のり、絵本づくりや子育てで大事にしていることなど、熱く語っていただきました。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら

絵本作家・のぶみさん

のぶみ

1978年、東京都生まれ。1999年、『ぼくとなべお』(講談社)でデビュー。主な作品に「しんかんくん」シリーズ(あかね書房)、『ぼく、仮面ライダーになる!』(講談社)など、自伝に『暴走族、絵本作家になる』(ワニブックス)など、歌の作詞に「おしりフリフリ」「おっとっとのオットセイ」(NHK教育「おかあさんといっしょ」)など多数。NHK教育の「みいつけた!」では「おててえほん」のイラストを担当している。
絵本作家のぶみのオフィシャルホームページ http://www.nobmi.com/

「ごめんね」を言う理由とは?『しんかんくん けんかする』

『しんかんくん けんかする』

▲「しんかんくん」シリーズ最新作は、けんかと仲直りがテーマ。『しんかんくん けんかする』(あかね書房)

「しんかんくん」の第5弾となる新作『しんかんくん けんかする』では、“しんかんくん”と“かんたろう”がけんかをしてしまいます。けんかをテーマに取り上げたのは、うちの子どもたちがよくけんかをするからです。

よくあるけんかの理由は、妹がお兄ちゃんの持ってるものをほしがるから。取り合いになって、けんかになっちゃうんですね。同じものが2つあっても、お兄ちゃんの持ってる方をほしがるんですよ。なんでだろうって、最初は不思議だったんですけど、見ているうちに気づいたんです。お兄ちゃんのことが大好きだから、お兄ちゃんの持ってるものも好きなんだって。娘にとっては、“お兄ちゃんの持ってるもの”も“お兄ちゃん”なんですよ。だから全部ほしくなっちゃうんでしょうね。

僕は、けんかするのも大事なことだと思っています。けんかするなって言ってもしますしね。でもそのあとの仲直りがもっと大事。子どもって「ごめんね」って言いたがらないんですよ。「ごめんね」って言うと自分が負けたような気がして、悔しくなる。自分から謝るってことは、子どもにとって結構勇気がいることなんです。

親に促されて「ごめんね」って言う、なんてこともよくあると思うんですけど、それじゃだめなんですよね。口先だけで言うんじゃなくて、なんで「ごめんね」って言うのか、きちんとわかった上で言わないと。『しんかんくん けんかする』を読むと、「ごめんね」って言うことの大切さがわかってもらえるんじゃないかな。

絵本の中に表れる“ありのままの自分”

絵本作家・のぶみさん

▲のぶみさんのもとに届く絵本を読んだ方たちからの手紙は、なんと年間2000通! そのすべてに返事を書かれているそうです

僕はスランプに陥っていた時期に、中川ひろたかさん内田麟太郎さんきむらゆういちさんという3人の人気作家さんに会いに行って、絵本の文章を書いてほしいと頼んだことがあるんです。

3人に会って感じたのは、人としての温かさ。一緒にいるだけで楽しくて、ずっと話していたいって思うような方たちでした。みんなから愛されていて、まわりにいつもたくさんの人がいるんです。僕の頼みも快く引き受けてくれて、すごく勇気づけられましたしね。

そういう人間味というのが、実はすごく大事なんですよ。絵本ってどうしても“ありのままの自分”が出るものだから、愛される人でないと、愛される絵本はつくれないって僕は思うんです。

だから、僕が絵本をつくる上で大切にしているのは、自分自身がどうあるか。結局自分の持ってるものしか出せないわけだから、どんな絵本ができるかは自分次第なんですよね。“自分”を隠して無理につくっても、よくない絵本が生まれるだけ。だからいつも自分に素直に、きれいな心でいようって思っています。

僕には絵本作家として心に決めていることがあるんです。それは、やりたいことしかしないってこと。仲のいい人の頼みでも、やりたくなかったらやらない。でもその代わり、やりたいことは人一倍やる。これは僕の覚悟なんですよ。

絵本を読んでくれた方たちから届く手紙すべてに返事を書いたり、送られてきた絵本にサインとイラストを入れて送り返したりってこともずっと続けているんですけど、それは、やりたいことをやらせてもらっているから。世の中にはやりたくないことをがんばってやっている人もいるんだから、自分はその分、その人たちに元気を与えるつもりでやっています。

絵本も子育ても人生も、おもしろがろう!

絵本作家・のぶみさん

読み聞かせのコツは、おもしろく読むこと。眠いなぁ、なんて思いながらけだるそうに読んでたって、盛り上がらないじゃないですか。映画なら効果音がばんばん入って、盛り上げてくれるでしょう。だから僕が子どもたちに絵本を読むときは、映画に負けないくらい盛り上げるつもりで、おもしろく読んでます。

僕の絵本は、なるべく棒読みでもおもしろくなるようにつくってますけど、やっぱり自分自身でおもしろくしていくってことが大事ですよね。それって、人生と同じですよ。自分でおもしろそうにしないと、おもしろくならないんです。

子育てで心がけているのは、怒らないこと。親がいくら怒っても、子どもの耳にはガミガミとしか聞こえないと思うんです。それってまったく意味がないでしょう。それに、子どもへの怒りは自分に対しての怒りにもつながるから、自分も苦しくなっちゃうんですよね。だから、怒るんじゃなくて「教える」ってことを大事にしてます。

それから、いい子にしようとしないこと。いい子にしようとしてがんばるのは、親にとっても子どもにとってもすごくつまらないことなんじゃないかな。それよりも、おもしろい子に育てる方がいいと思うんですよ。なんでもかんでも深刻にならずに、子どもと一緒にいろんなことをおもしろがれば、おもしろい子が育つと思います。うちの子どもたちは、二人ともすごくおもしろいですよ(笑)


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