絵本作家インタビュー

vol.62 絵本作家 tupera tuperaさん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『かおノート』『どんなおと?』など、カラフルで楽しい絵本で人気を集めるご夫婦ユニット・tupera tupera(ツペラツペラ)のお二人です。絵本のほかイラスト、立体作品、アニメなど、さまざまな分野で活動しているお二人が、創作活動や子育ての中で大切にしていることとは? 新作の制作エピソードも伺いました。
今回は【前編】をお届けします。(【後編】はこちら→

絵本作家・tupera tuperaさん

tupera tupera(ツペラツペラ)

1976年、三重県生まれの亀山達矢と、1978年、京都府生まれの中川敦子によるユニット。2002年より活動をスタート。絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、立体作品、アニメーション、雑貨など、さまざまな分野で活動中。主な作品に『しましまじま』(ブロンズ新社)、『かおノート』(コクヨS&T)、『どんなおと?』(教育画劇)、『やさいさん』『くだものさん』(学研)などがある。
http://tupera-tupera.com

自分たちなりの創作活動を続けるうちに、絵本の世界へ

絵本作家・tupera tupera 亀山達矢さん

亀山達矢さん(以下、敬称略) 僕たちが出会ったのは、19歳のとき。美大受験のための予備校時代からのつきあいです。僕は美大生活を謳歌したあと、バイトしながら、たまには絵を描くかな、みたいな生活をしてました。

中川敦子さん(以下、敬称略) 二人とも、会社に勤めてバリバリ働くというよりも、自分たちなりの創作活動をしていけたらって気持ちがあったんです。私は服飾作家として、バッグやクッションなどの布小物をつくって展示販売するようになって。代官山のお店で展示販売をすることになったとき、なんとなく亀山に「一緒にやってみようか」って声をかけたんです。

そのときつくったのが、12本のマフラー。亀山が描いたキャラクターを私が縫いつけた、タペストリーのような一点もののマフラーを12本、ウィンドウに展示したんです。動物が行進しているものとか、魚がずらっと並んでいるものとか。tupera tuperaの原点ですね。

亀山 その展示の評判がよかったので、その後もいろんなところで展示させてもらえるようになって。それならブランド名が必要だよねってことで、「tupera tupera(ツペラ ツペラ)」という名前をつけたんです。変てこな呪文とかおまじないっぽい感じを意識した造語です。

中川 同じ音を繰り返すことで、なんとなく二人組みっぽい感じも出るかな、ということで。今もTシャツとか布小物をつくったときは、「tupera tupera」とプリントされたブランドタグをつけてるんですよ。

亀山 絵本をつくることになったのは、展示を見に来てくれたお客さんからの声がきっかけです。僕たちの作品に絵本っぽい雰囲気を感じた方が多かったみたいで、「絵本はつくられてないんですか?」とよく聞かれるようになったんですね。それで、自費出版で『木がずらり』という絵本を出したら、そこからまた絵本の仕事が入ってくるようになって。

tupera tuperaという名前を作家名として使うようになるとは、思いもよらなかったんですけどね。自分たちなりの創作活動を続けていたら絵本にたどりついた、という感じです。

二人でつくりあげるtupera tuperaの世界観

中川 私たちの絵本づくりは、一方がテキストで一方が絵といった分担はなくて、二人ともどちらもやってます。

亀山 このモチーフは中川、このモチーフは僕、みたいな感じで、モチーフごとにバラバラだったりするんですよ。ひきだしの中から適当に紙をとって、ちょちょいと切って、貼る。全部、やりたい方がやるんです。文章もつくりたい方がつくることにしています。

中川 もともと絵は亀山がメインで担当していたので、今でも絵の具で描く部分は亀山がやるんですけど、それ以外は特に役割分担はないんです。いい意味で、どっちがやってもそう変わらないよねって感じで。二人で活動を始めるまでのつきあいも長かったので、好きなものとか興味をひかれるものとか、価値観はわりと共通していたんですよね。

しましまじま ワニーニのぼうけん
どんなおと? アニマルアルファベットサーカス

▲カラフルでユニークなtupera tuperaワールドの絵本!『しましまじま』(ブロンズ新社)、『ワニーニのぼうけん』(婦人之友社)、『どんなおと?』(教育画劇)、『アニマルアルファベットサーカス』(フレーベル館)

亀山 つくるものは完全に一緒ではなかったし、好みに若干のずれはあって、今もそれはあるんですけど、ずっと一緒に仕事をしてきているので、その積み重ねでtupera tuperaの世界観ができあがってきたんですよね。それに何より、面倒な作業も二人でできると楽ですし(笑)

絵本に限ったことではないんですけど、作品は基本的にパソコンは使わずに、すべて手作業でつくっています。いろんなやり方があると思うので、どれがいいとか悪いとかではないんですけど、絵本や造形物が自分の手もとでできあがっていく、その喜びを感じるってことは、僕らの中ではすごく大切なことなんです。だから手づくりのアナログ感はこれからも大事にしていきたいですね。

年齢問わず誰でも楽しめる!『かおノート』

亀山 『かおノート』は、“圧倒的におもしろいワークブック”を目指してつくりました。赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで誰でもできて、家の中はもちろん、移動中の電車や飛行機とか、飲み会とか、どんな状況下でも楽しめるワークブックをつくりたいと思って。

目・鼻・口などの顔のパーツがシールになっていて、各ページの顔に好きなように貼っていくワークブック なんですけど、シールは貼ったりはがしたりできないようにしています。一度できあがったら、それを再度直すことに時間や労力を費やすよりも、次の顔にいってもらいたいですからね。一度貼ったらそれっきりってことにしないと、人気のあるパーツばかり使うようなことにもなりそうだし。

『かおノート』

▲さまざまな顔のページに、目・鼻・口など顔のパーツのシールを貼って楽しむワークブック『かおノート』(コクヨS&T)。2010年9月には『かおノート2』が出版される予定

中川 それに、はがして貼り直せるシールだと、たとえば2歳のときにつくったものを、年齢が上がってからまたつくり直すってことができてしまうので、2歳のときだからこそできた“顔”が残らないんですよね。

つくった日の日付をメモしておけば、子育て日記みたいにも使えて、あとで見たときに楽しいんじゃないかな。1歳くらいの子でも、貼る楽しさみたいなのは感じると思うので、偶然の産物でいい顔ができあがったりすると思います。

亀山 会社を辞める人に、1社員1ページずつでそれぞれの顔をつくって、メッセージとかも書き添えて、寄せ書きのアイテムとして使ってるという話も聞きました。

『かおノート』のおもしろいところは、同じパーツでも絶対一緒にならないってところ。ちょっとした傾きとかで、全然違う顔になるんです。9月に出る『かおノート2』では、1とはまた違ったモチーフがたくさん入って、さらにおもしろい感じになっているので、どんな 顔ができるのか、今からすごく楽しみですね。


……tupera tuperaさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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