イチ押し絵本情報

白黒の森の中に広がる子どもの想像力(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.68)

2016年2月18日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 白黒の森の中に広がる子どもの想像力

今回ご紹介するのは、マリー・ホール・エッツさんによる名作『もりのなか』。日本には1963年に紹介され、100万部超のロングセラーです。

ぼくが森の中へ散歩に行くと、森の中にいた動物達がつぎつぎと行列になってついてきました。みんなでピクニックしたり遊んだり。最後にかくれんぼをして、おにになったぼくが「もういいかい」と目を開けると、動物達はいなくなっていて…。

見開き

少年が森へ散歩に出かけ戻るという、シンプルなストーリーです。ページをめくるごとに、新たな動物と出会い、行列が長くなっていくという繰り返し。特に大きな事件が起こるわけではありません。しかし少年の心の中では、空想の世界が大きく広がっているのです。


子どもが好きなライオンやゾウといった動物達が、身づくろいをして付き従い、共に遊びます。エッツさんは幼少時代を、米・ウィスコンシンの森や湖で過ごしたそう。森や森に住む動物達をよく知るからこその実在感のある森。この森の中だからこそ、子ども達は心置きなく想像力をはばたかせて遊ぶことができるのでしょう。児童文学者の松居直さんは、「子どもの遊びの意味と本質を、見事な文と挿絵とで表現してる絵本の傑作」(『松居直のすすめる50の絵本』教文館)とこの作品を評価しています。

また、黒いコンテのみで描かれた絵も、不思議な世界観をつくりあげています。同時にモノクロであることから、子どもが興味を持たないのではと敬遠されがち。絵本作家のいちかわけいこさんは、親になってからこの絵本を見て、モノクロであることに驚いたそう。「私の中では、色がついていたんですよ。子どもって、白黒の絵も、自分の頭の中で色をつけて見ているんだって、自分自身の体験から知りました」と語っていらっしゃいます。子どもの想像力を引き出す物語と絵なのだと言えるでしょう。

最後に、少年をお父さんが迎えに来ることで、楽しかった動物との遊びが終わってしまいます。ただ、それを受けたお父さんが言う言葉は、「きっと、また今度まで待っててくれるよ」。子どもの気持ちに寄り添う穏やかな言葉のおかげで、話を聞く子どもも、穏やかな気持ちで絵本を閉じることができるのでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
以前から何度も『もりのなか』の読み聞かせは試みてきたが、良くも悪くも色の氾濫している書店の中では、表紙を見せるだけで拒否されてしまっていた。今日は強制的に購入して家で読む。落ち着いた環境のもとで出会うことが必要な本もあるんだと思ったのは、息子が読み聞かせの間中じっと聞き入っていて、終わるとすぐに「もう一回」とせがんだから。(1歳11か月の男の子のママ)

森や動物達との遊びに引き込まれた大人と子どもは、ぜひ「また来たとき探すからね」という約束を果たして、続編の『またもりへ』をのぞいてみてくださいね。

▼いちかわけいこさんのインタビューはこちら
「『あなたのことを思っているよ』読み聞かせは、愛を伝える手段」


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